緊急事態宣言下。続々と届く、面接延期、採用中止のメール

私は就職活動を終えられなかった。
大学3年になったらインターンに行き、大学4年の前半には就活を終え、卒業と同時に就職する。黒髪スーツで、みんな足並み揃えて。
これが当たり前だと思っていた。

明確な将来の夢がなかった私は、ひとまず大手のインターンに参加し、ひたすら業界研究を進めた。
自分と向き合うことが苦手な気持ちを押し殺して幼少期から今までの年表を作り、自己分析を作っていった。そしたら、興味のある業界がみえ、向いている業界が見えてきた。それが嬉しくて、エントリーシートを書きまくった。
でもそれも儚く散ることになった。
時は緊急事態宣言が発令された2020年4月、続々とスマホに届くのは面接延期、採用中止のメール。もはや、お祈りメールですらなかった。

どうにかして就職しなきゃ。そんなある日、私は包丁を握っていた

なんとか方向転換しなきゃ。そう思った私はひたすらエントリーした。内定がないのが怖くて、とにかく動き続けた。
自己分析に基づいて作ってあった自己PRと、どうにか自分の本心に繋げて書いた志望動機。
そんな私を待ち受けていたのは、私の志望動機を鼻で笑う面接官と、圧迫面接だった。

その面接を経験してから、どんなに就活に向き合っても、パソコンと睨めっこしても、志望動機が書けなくなっていった。
何を書いても、目に浮かぶのは鼻で笑う面接官。どんな理想を思い描いても、次の瞬間には打ち砕かれる。
逃げてるだけなのかもしれない、弱いままじゃダメだ、どうにかして就職しなきゃ。ここまでお金をかけてくれた親に申し訳ない。
この想いだけで息をしていた。動悸が激しくなりながらもエントリーし続けた。

そんなある日、包丁で自分を刺して仕舞えば全て終われるんじゃないか、そう思って包丁を握っている自分に気がついた。自分で気づくことができた。
その時、理性が働いているうちに就活なんか辞めてしまおうと、決めた。

新卒での就活が全てじゃない。人はそう簡単には人生を終えられない

どうしてみんなにはできて、わたしにはできなかったんだろう。
いつから私はみんなと同じようにできなくなったんだろう。
いつから親の期待通りの娘じゃいられなくなったんだろう。
先生の言うことも、親の言うこともちゃんと聞いてきたのに、真面目に生きてきたのに。
就活をやめても、その思いだけは消えることはなかった。

新しい年度が始まって半年が経つ。10月には一つ下の学年の内定式。肌寒くなると今も不用意に焦ってしまう。
私は新卒での就活ができなかった。全てに真面目に向き合いすぎてしまった。
でも今なら思える。
真面目はほどほどでいいし、自分が一番でいい。親も周囲の目も一旦置いて、自分本位で生きてもいい。
これが今の私を支えている。

就活で炙り出された自分の弱さを受け入れ、自分の選択に胸を張って生きていけるように、今、毎日を生きている。あの日自分で自分の行いを止められた自分に誇りを持って。
新卒での就活が全てじゃない。こんな茶番で全てを失ったら元も子もない。
新卒で就職できなくても、人生何とかなる。人はそう簡単には人生を終えられない。

そんなに、頑張りすぎなくてもいいよ。
なんとかなるから。