年明けが近づくと抱負とか目標について考えなければという思いが頭を掠めるが、結局決めきれずに流れてしまい、気づけば2月とか3月になっている。今までの人生で年明けに決めた抱負を年末まで意識出来た試しは無い。

自発的に決めた目標は「中庸」バランスを取りつつ何か一つに挑戦したい

お正月になる度に「今年の抱負は?」なんて父親や親戚に聞かれるのが嫌だったものだ。じゃああなた達は何が抱負でどんな目標があるって言うんですか。若いというだけで未来への希望いっぱいのイメージを押し付けるな、と思う。とはいえ私も歳を取ればそうなってしまうのだろうな。せめて若者の重荷にはならぬよう気をつけたい。

抱負なんてそんな感じで誰かの強制力の下に言わされるものでしか無かった。ただ唯一、自らエンジンをかける自我が芽生えたのが2018年。SNSの投稿に「今年は『中庸』を大事に色んなことのバランスを取りつつ、何か一つ打ち込めることに継続して挑戦したい」と珍しく自発的なことを書いていた。

前年に社会人1年生を経験して働くことと生活のバランスの大切さを実感して抱いた目標が『中庸』、バランス。一日のうちの三分の一を会社で過ごす、同じことをしてこのまま歳を取っていくことに恐怖を覚えた。だからこの時は、会社が私の全てにならないように、との思いでこの抱負を掲げたのだった。

ただ当時は環境さえ変えれば、何か天職のような、好きなことを見つければこのルーティンワークに対するマンネリはどうにかなるものだと思ってしまっていた。だから何者かにならないと、と新卒の時に夢見た客室乗務員の面接を片っ端から受けまくって落ちた。

その先で辿り着いたのがフロリダのディズニーワールドでキャストとして働くことのできる、C Rプログラムだった。アメリカで生活しながらディズニーと三越の接客を学び実践することが出来るという環境で、卒業生の客室乗務員への就職率の高さには定評があった。

何者かになりたくて、フロリダでディズニーキャストの生活スタート

2019年夏。面接に合格し、1年間のアメリカ・フロリダでのディズニーキャストとしての生活が始まった。レストランサーバーとしての仕事はルーティンワークの最たるものだったが、いつまで経っても周りと比べて出来るようにならなかった。

そもそもキビキビ動けるタイプではない。ミーハー的な憧れでフロリダのディズニーキャストになってしまったが、ディズニーが心の底から好きな人には敵わないと思う場面が数多くあった。そしてこれはきっと、この後に客室乗務員になったとしても同じなのだろう。

何者かになることがゴールなのではなく、ルーティンそのものを楽しめるかどうか、その過程に信念のようなものを持っていられるかどうかが、仕事をしながら人生を充実させる為には大切なのだ。言葉にして仕舞えば簡単なことだが、いつまで経っても自分に自信の持てない私は、自分自身を堂々と紹介できるような肩書きや実績を手っ取り早く欲した。

その結果、コロナ禍によってプログラムを最後まで終えることが出来ずに2020年の4月に帰国した後も、次の『なるべき何者か』を探して迷走した。オンラインで面接を受け続けるも、しっくりくるものに出会えず。そんな折に登録していた転職サイトでキャリアカウンセラーさんと喧嘩もどきの電話をするほどまで追い込まれたところで、母が『焦らなくて良いから、本当にやりたいことをやりなさい』と言ってくれたのだ。

歩みたい人生、幸せとは何かを母の言葉をきっかけに考え始めた

これをきっかけに私は、歩みたい人生についてとことん考え始めた。今まで人生ってやつは節目節目のハイライトとなる出来事以外は気に留める必要もなくやり過ごすものだと思っていた。例えば何かを成し遂げた時とか、大きなイベントが大事で、日常というものはそういう未来にある大きな出来事のためにすり減らすようなものだと。売れる絵を出来るだけたくさんの枚数描かなければならない画家のようなプレッシャーを感じていた。

その反面、私には他の小さな楽しみ(例えば好きな本を読むとかカラオケで熱唱するとか、こうやって文章を書くとか)を犠牲にしてまで成し遂げたい大きな夢も目標も特にないのである。だとするならば、私にとっての幸せとは何なのだろう?

ここで2018年に掲げた抱負に戻る。『中庸』である。私は他人に受容れられるような、売れそうな絵を何枚も描くよりも、果てしなく大きいキャンバス1枚に好きな色や線を塗り重ねていって、死ぬときに良い味のある絵が描けたなと納得して逝きたい。そのためにはどんな日常も疎かにしてはダメで。毎日は選択の連続だけど、出来るだけ心の錘をフラットにして納得出来る色を塗り重ねていきたい。

何かに依存するレベルで熱中しすぎたり、怠けすぎたりする事もせず、バランスの取れた状態で心の声に従った行動を積み重ねること、その上で常に一歩だけ心地の良い状態から出て挑戦してみる。これは生涯かけての目標であり、今年2021年に改めてここに宣言する。