私は、何事においても三日坊主である。何かを継続することがとても苦手だ。中途半端な日記帳。読みかけの本。時が止まったままの、日めくりヨガカレンダー。
だが、こんな私にも続いていることが一つだけある。……ちょっとした自慢。体幹トレーニングだ。体幹トレーニングというのはその名の通り「体の幹」、別名インナーマッスルを鍛えるトレーニングのことである。

お風呂に入る前に行う五分間の「体幹トレーニング」が私の日課

スマートフォンから流れるインストラクターの声。その厳しくも優しい声を聞きながら、お風呂の前に行うのが日課になっている。
ちょうど、腕立て伏せのような恰好で、肘から下は地面につけて行うのが基本の体勢。地味だが、これが結構きつい。毎回梅干しのような顔になる私。全力疾走したかのようにハアハア言っていると、何事かと思った父がときどき覗きに来る。
もともと筋肉の付きにくい体質であった私にも、今ではパッと見て分かるくらいには筋肉がついた。

体幹トレーニングを始めて半年。なんとか今日まで続いている。そんな私のプチ自慢には、始めるきっかけとなった出来事がある。離職だ。
半年前、私は仕事を辞めた。一年間のアルバイト生活を経て、再度同じ職種にと転職し、就いた仕事だった。
辞めた理由は、大雑把に言えば人間関係。よくある理由。だけど、よくある理由の中身はみんな違う。それぞれの人間関係。へなちょこな私は、私の人間関係の中で自信をなくしてしまった。

今まで何もかもが三日坊主だった自分。何か継続することが出来れば

自信をなくした私は、そんな自分から脱するための方法を考えた。そして、ひらめいたのだ。今まで何もかもが三日坊主だった自分。一つでも何か継続することが出来れば……。
しかし、現実はそう甘くはなかった。飽き性な性格がすぐに変わるわけもない。太陽の光によって、驚くほどポジティブになれるかもしれないと目論んでいた早朝ランニング。なめらかな書きやすさが売りのお洒落な日記帳。時事ネタについて勉強しようと購入した本。やはり、どれも続かない。自分の甘さに打ちひしがれる。

そんな私を尻目に、父と母はフルマラソンの大会へ向けて颯爽と走りに出かける。帰ってきてからもストレッチと筋トレを怠らない。その姿に思わず詠嘆の声をもらす。そしてまたしても甘い考えが浮かんだのだ。
「体幹を鍛えれば心の幹も太くなるのではないか」と。
なんと、これが自分に合っていた。父と母のヨガマットを拝借。続けやすい五分以内の動画を選んだ。初めの頃こそ辛かったが、続けていくうちに以前よりも楽になっていることに気づく。

へなちょこで自信がないけど、鏡を見れば以前と一味違う私の心が映る

うっすらと割れ始めた腹筋。妹に自慢しすぎて煙たがられたりもした。楽しい。嬉しい。
そして、何よりも自分を継続へと導いたもの。それは「体幹を鍛えれば、心の幹も太くなるのではないか」という、自分自身の発想だった。
へなちょこな私は自分に自信がない。他人の声に揺れたり、迷ったり、自分の声すら分からなくなったり。体幹を鍛えたからといって急に自分が変わるわけはない。分かっている。へなちょこな自分はそのままだ。

だけど、洋服を捲って鏡を見れば、そこには以前と一味違う私の心が映っている。
そんなこんなで転職先も決まり……と、締めくくりたいところ。只今、絶賛転職活動中。少しだけマッチョになった自分を洋服の下に隠しながら。
折れそうになったら思い出す。私のお守りのような存在。どんな時も、自慢できる私で在れますように。自慢の体幹。インナーマッスル!