まっすぐ私の目を見ながら伝えてくれた言葉に目頭が熱くなった

"I'm proud of you."
ここまでの道のりがいかに大変だったか一通り話し終えた後、メガネをかけた空港職員が私にそう言った。
彼女の言葉はちゃんと聴き取れた。でも、聞き返さずにはいられなかった。
"Pardon?"
私の返事に、彼女はまっすぐ私の目を見ながら、
"I'm proud of you, so much."
と言った。彼女の嘘偽りのない目に、私の心拍数は高まった。血液の流れが速まり、体の細胞がパッと弾ける。こんな感覚、初めてだ。

興奮して身体の巡りが良くなったせいか、鼻の奥がツンとしてきて、目に熱いものが込み上げてきた。彼女の目に私の泣き顔は映したくない、と思った私は伏し目がちに、
"Thanks."

と返し、スタスタとカフェの方へ向かった。
カフェの席に着いた時、私の目からは涙がとめどなく流れてきた。涙って、こんなにあたたかいものだったのか。

鋭い矢を感じていたあの時、帰国できなければ上司に怒られると思った

夏休みの旅行最終日。カナダのジャスパーからバンクーバーへ長距離列車で向かい、その後国際便で日本へ帰国する予定だった。
しかし、列車が大幅に遅れ、このままだと日本へ帰る便に間に合わない。

「怒られる。何とかしなければ」
一度深呼吸をした私は、通りがかった列車のスタッフたちに自分が乗る予定の飛行機について相談した。
彼らのアドバイスを受けた私は急遽列車を途中下車し、タクシーを乗り継いで地方空港に行き、なんとか予定通りの国際空港へ飛ぶ航空券を手に入れた。
「ああ、これで何とか怒られずにすむ。上司に……」

当時の私は社会人2年目。仕事がうまく回せず、会社で周りからかけられる言葉や視線には常に鋭い矢が向けられているように感じていた。帰宅後は身体に刺さった矢の痛みが腫れ、破け、いつも心はぼろぼろだった。
そんな生活が続いていたため、予定通りに帰国できなければ上司にまた怒られる……。そう思ってしまっていた。

列車の中で悲観的になっていた3時間前の私に伝えたい言葉がある

カフェの席に置いてあるメニューがきちんと見えてきた。涙でぼやけていた視界がはっきりしてきた。
一度深呼吸をし、列車内で撮った朝4時過ぎの景色を見返す。その空の色は薄いピンクで、昔飲んだピンクレモネードの色に少し似ていた。
仕事でも旅行でもうまくいかない。
「こんな私のこと、きっと誰も必要としていない。それならいっそ、もう日本に帰らなくてもいい」

列車の中で、私はそう思っていた。いつからか、自分のことがすべて嫌になっていた。
負けず嫌いなこともあり、会社で泣いたことは一度もなかったが、自宅の部屋では毎晩泣いていた。その時流れる涙は、いつも、とても冷たかった。会社で泣けば誰かが気を遣ってくれるかもしれないのに……。そう期待する気持ちも嫌だった。
今は7時。3時間前の自分に言う。
「今日という一日も、あなたの人生も、まだ始まったばかり!」