就活は、私にとっては趣味事を充実させるための、活動だった。
ずっと小説を読み、漫画を読み、エッセイを読み、時々おやつやお茶を飲んでアニメや洋画を嗜む生活を永遠にしたかった。
人間生きているだけでお金がかかる。
なによりそんな生活は世間も親も許さない。

早く帰れて休める会社がいい。直感で選んだ一社にすんなり入社した

皆が就活で給料が安い!と騒ぎ、血眼で1円でも10円でも高い会社や企業を探す中、私が重視したのは、早く帰れて休みがある会社。
とりあえず正社員がいいと思ったのは響きがよかったから。両親や周囲、自分のためにも正社員というベールは色んなものから守ってくれる気さえした。

皆が必死になって企業説明会に繰り出す中、私はなかなかやる気が出ずに、秋になってようやくどっこらせと重すぎる腰をあげた。
候補はなく、直感で一社にしぼり、説明会に行き、2ヶ月後の面接にいった。小論文を持参するように言われ持っていったが、目を通したか怪しいところだ。
本社ではなく支店の倉庫で面接された。
何日かに分けて面接は行われるらしく、私が受けにいった日は私だけだった。
一社しか受けてないと素直に伝えるとすんなり合格してしまい、拍子抜けだった。
私は昔からそんなところがある。
どうでもいいことは人一倍病むまで悩むくせに、大事なことは運まかせだ。
世渡り、このペンネームも周囲から世渡りが上手いと言われことに由来する。

真面目に就活をすればよかった。疲弊し、休みの日はひたすら寝ていた

そんなこんなで趣味事を充実させるために会社に入社したのに、最初の1年目は目まぐるしくて、趣味事なんてほとんどできなかった。
休みの日もひたすら寝ていた。
体を休め、体力の温存に努めるあまり、他にエネルギーを放出できないほど疲弊していた。
ストレス性の胃炎をしょっちゅう起こしては、吐き、月に数回点滴を打ちに病院に行く。
社会人が思ったより下手くそだった。
あの時真面目に就活をすればよかったと、吐きながら、涙をボタボタと滴しながら後悔した。

2年目に入ると会社で大きな人事異動があり、私は巻き込まれる形になって現場が変わり、ようやく帰りに本屋によるくらいの、ゆとりができてきた。
本屋は週に1回ペースから2回、3回に増えてきて、最終的には、ほぼ毎日通うようになっていた。

こうして私は私を取り戻していた。
活字がすうっと心に、魂に浸透していき、細胞のひとつひとつが息を吹き返し生き生きと活動し始めた。
自分の給金で小説や漫画の続きを買い、エッセイの記事をネット読み漁り、お菓子を食べてお茶を飲んだ。
平日には真面目に会社に行き、家に帰って息を吹き返す繰り返しが私を生き返らせる。

社会人5年目、小さな進化を遂げた。新しい夢のために就活中

就活はこの世の終わりのはじまりだと思っていた。
社会に揉まるなんてまっぴらだ。
そんな人間臭く生きてたまるもんか。
私は好きな事をして、好きなものを食べて暮らしたいとも。
好きな事をして暮らすために働くことは案外悪くないなとようやく分かった頃、5年目を迎えた。

この5年の間に私は文章を書いてお金を頂くという機会に恵まれた。
以降様々なジャンルにトライし、活字の海を渡っている。
好きなことにするために働くという目標は超え、今では働きながらも好きな事でお金を生み出すまで小さな進化を遂げた。
いつかは好きな事でお金を生み出し、暮らしたい。

文章を書いてお金を貰えるのはまだまだ奇跡に等しく様々な公募に応募しているが、小さな賞にはいるか入らないか、図書カードが貰えるくらいだ。
それでもたまに現金が入金されるとやはり嬉しいものだ。

私は今、小さな夢物語の種を持っている。
しばらくは仕事も辞めるつもりはない。
いまでも私は新しい夢のために就活中である。