心が躍った彼の存在。人間以外と付き合えないなんて誰が決めた?
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「将来は、ウシさんと結婚する!」と半分本気で半分冗談で言っていたのは、私が幼稚園の頃。私は昔から動物が好きだったため、こんなにかわいいウシさんと一緒にいれたら幸せだろうと考えていた。
年齢が上がっていくと、もちろん現実的でないことはすぐに理解できた。大人になったら男の人と結婚するのが当たり前だし、自分にもそういう相手ができると思っていた。
しかし、現実はそんなに上手くいかない。これまで何人かの男性と付き合ったことはあるけれど、すぐに別れてしまう。
原因は私にある。それは、恋愛で心が躍らないから。好きと言われても優しくされてもピンとこない。デートに行けなくても、私は私で楽しめているので問題がなかった。
結婚なんて絶対無理だと思う。そもそも他人と一緒に住むということが考えられない。周りは結婚を意識し始めているのに、どうしようかと悩んでいた。
そんな私に運命の出会いは突然やってきた。
ある日、ホームセンターのペットコーナーに行った。飼っていた犬が亡くなってからは足が遠のいていたけれど、その日はなんとなく行きたくなった。
ケージに入っている犬を順番に見ていると、昔飼っていた犬種のシュナウザーの男の子と目があった。手を少し動かすと私の手をずっと追いかけてきて、「この子しかいない!」と直感で思った。
しかもその子の誕生日は、私の推しと同じ。本当に運命だと思った。
高まる気持ちを抑えつつ、一旦家に帰って冷静に考えることにした。
実は高校生くらいから、私の彼氏は犬がいいと思っていた。なぜなら、犬は飼い主を裏切らないし、人間みたいに駆け引きもしない。一緒にいて飽きるなんてことはないし、倦怠期も来ない。お互いを必要とし合える、こんな完璧な関係性を築けるのは犬しかいないと思っている。
だから、私は周りに何と思われようが、犬と結婚したいと思っている。
「私はあの子に一目惚れしたんだ」と思うと、四六時中その子のことが頭から離れなかった。でも、流石に勢いで飼うなんて無責任なことはしたくないので、それから数日間、その子に会いに行った。
ある日は寝ていて、またある日はおやつに夢中で、なかなかこちらを見てくれない。でも、前の愛犬が亡くなってから色々な犬を見たけれど、こんなに心が動かされることはなかった。だからこそ、この出会いには意味があると思った。
店員さんに話を聞いて、名前をつけるなら「だいすけ」だな、なんて考えながら、これから絶対にこの子を幸せにしてあげようと心に決めた。私の家族も何度かその子を見てもらい、たくさん話し合った。
こうして文章にすると、本当に人間の男性を好きになって、付き合う前のソワソワした感じから、付き合って家族に紹介するという一連の流れみたいだと自分でも笑いそうになる。でもこれは、私と犬の恋愛?だ。
普通の恋愛ではないかもしれないけれど、私にとっては本当に幸せだし、皆の真似をする必要はないと思っている。でもこんな少し変わった恋愛スタイルは、周りの人から理解はされないだろうから誰にも言えない秘密の恋だ。
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