この間は電話をありがとう。びっくりしたよ、君が死ぬかもしれないなんて。
昔は消えて欲しいくらい憎かったけど、実際に消えてしまうとなると悲しいな。本当にもうどうしようもないの?

もうずっと会ってなかったのに、ずっと君が心の隅にいた

君とは嫌な思い出しかないよ。それでもあれがわたしの青春だったんだから、なかったことには出来ない。君がどこまで覚えているかわからないけれど、わたしは出会いから鮮明に覚えているよ。
今考えても、本当に君は酷いことしかしてくれなかったな。笑ってしまうくらい。
なんで好きだったんだろう。なんでお互いに離れられなかったんだろう。それこそ、最後の最後にまた連絡をよこすなんてね。わたし達の関係って案外悪くなかったのかもしれないね。

たくさん傷つけたし傷つけられた。それでも残るこの感情に名前なんてないけど、忘れたくはないよ。たとえ君が本当に死んでしまったとしても。わたしは君を抱えてこれからも生きていく。君だってそうだよ。わたしを忘れられずに生きていきなよ。生きなよ。

輸血が辛いって言ってたけど今はどうかな。調べたら輸血しないと辛くなってくるみたい。
大丈夫じゃないだろうけど、きっと良くなるから。ドナーだって見つかるし、わたし達はまた会える。何年ぶりだろうね。もうずっと会ってなかったのに、ずっと君が心の隅にいたんだ。

川辺で散歩して、公園で何時間も話した。あれがわたしの青春

最初はクラスの女子全員に連絡先を聞いていたね。わたしは自分だけ聞かれたと思ってすこし嬉しかったんだけど。それから学校では話さないけど、メールのやり取りは毎日したよね。
あの時は楽しかったなぁ。君がクズだとは知らずにいたし。死にたいって送ってきたときはびっくりしたけど。今こんな話はするべきじゃないか。でもあの一言で全てが始まったんだよ。

それからわたし達は学校の外で会うようになった。学校では見かけても知らんぷりしてたよね。でも毎日、夜の川辺を散歩したり、公園で何時間も話した。あれがわたしの青春だったよ。今思うとね。

でも君はいつも不誠実だった。いつだって連絡は君からで、わたしからはできなかった。君の都合の良い時しか会えなかった。話せなかった。
その上、君は学校を辞めた。理由は今でもわからないままだけど、簡単には会えなくなった。年に一回か二回、連絡が来るか来ないかそんな関係になった。

久しぶりだったからか、声を聞いただけで泣いてしまった

そしてわたし達は二十五歳になった。わたしには彼氏がいたから、もう何年も会うどころか、電話すらしていなかったよね。
それなのに何を思ったのか、ブロックリストから外したんだ。何年も話してなかったのに、いつもみたいに話せた。わたし達はあまり変わってはなかった。

まさか病気の話をしてきたときはいつもの冗談だと思ったよ。だから酷い言葉を浴びせたね。ごめん。またわたしの気を引きたいだけだと思ったんだ。
本当だと知った時は頭が真っ白になった。しかも聞いたことのない病気で、ドナーが見つからないと死んでしまうだなんて。

電話で話した時、久しぶりだったからか声を聞いただけで泣いてしまった。あの時はごめんね。わたしは君のことがずっと好きだったんだ。言ったことあったっけ。ずっとずっと好きだったんだよ。今度会ってちゃんと言うね。きっと君は大丈夫。だからまたわたしと会えるのを楽しみにしててよ。

電話もラインも消してしまったみたいなので、手紙を書きました。なんだか照れるね。
病院だって教えてくれたら行くからね。また連絡ちょうだいよ。