貴方が元気なことは知っています。
だって、楽しそうなインスタが流れてくるから。私は貴方をブロックする勇気もないから。
でも私も貴方と同じくらい元気なの。強がりじゃありません。本当よ。
ただそれだけを伝えたくてこの手紙を書いています。

「セックス気持ち良くないから別れよう」なんて初めて言われました

貴方は3ヶ月前、手酷く私を振りましたね。
男の子から「セックス気持ち良くないから別れよう」なんて初めて言われました。
それでもその時は私は貴方を嫌いになれなかったから、縋ったし泣いたし恨んだし、それはもう悲惨でした。

今思えば貴方はいつも私に色々なことを教えてくれました。
高校生の時は、私の苦手な数学と物理を根気よく面倒見てくれて、テスト前に半泣きで電話しても丁寧に教えてくれました。
貴方とは部活も同じで、バイオリンの弾き方だって教えてくれましたね。今だから言いますが、私は貴方がバイオリンを弾いている姿を見た時から好きだったのかもしれません。

大学生になって、貴方と付き合うようになってからは、それはそれは楽しい日々でした。毎日が忙しくて輝いていて、何より貴方の匂いに囲まれていることが幸せだった。
何もかもが初めてだった私に、貴方は女としての快感を教えてくれました。
私は自分の足と足の間のぬかるみに貴方が浸食していくことが不思議と怖くなかったし、貴方の欲に濡れた目に見つめられるほど私をさらに女にしました。
大学生という気楽な無責任な身分の私たちは、貴方の小さな部屋でおままごとみたいな、おままごとにしては淫らな生活を送っていましたね。

本当に貴方は酷い人。溺れた私も、それまでの女かもしれないけれど

しかし、こんな甘い生活はそう続くものではありません。
貴方は私を次第に雑に扱いはじめました。会うのは貴方の部屋ばかりになったし、その部屋はいつも散らかっていました。返信は全然返ってこないし、旅行の計画も宙ぶらりんのままでした。
たまに会っても貴方は当たり前のように私を抱き、しかもそれは少しずつ乱暴なものになっていきました。終わった後に私に見向きもせず、YouTubeを観ながら煙草を吸っている貴方の隣にいるのが酷く切なく感じました。
そして極めつけは「セックス気持ち良くないから別れよう」です。
本当に貴方は酷い人。それをわかっていながら貴方に溺れた私も、それまでの女なのかもしれないけれど。
貴方は最後に所有の喜びと喪失の辛さを教えてくれました。

でも不思議なものね。
貴方に一喜一憂しなくてもいい生活は穏やかだし、貴方に捨てられたおかげで私を大切に想ってくれる友達が大勢いたことに気付けました。
たった3ヶ月で、私は貴方がいなくても十分満ち足りた生活を送っているのです。

私今好きな人がいるの。だからどうか貴方も幸せになってください

それにね、私今好きな人がいるの。
彼は貴方のような大胆さや度胸は持っていないけれど、物や人に対して簡単に好き嫌いを言わない慎重さを持つ優しい人です。この人のフィルター越しに世界を見ることができたらどれだけ幸せなんだろうと思わせてくれる素敵な人です。
まだ彼とはどうなるかはわからないけれど、毎日ちょっとしたことで心が高まっていくのを感じます。

だからどうか貴方も幸せになってください。
貴方は私のことなんか忘れて十分幸せだろうけれど、それでも私から貴方の幸せを祈らせてください。私は貴方をもう恨んでないし、良い思い出をもらったと晴れ晴れしい気分でこの手紙をしたためているのです。貴方と少しでも時間を共有できてよかった。今は心からそう思っております。本当にありがとう。

最後にもう一つだけ言わせてください。
二度と貴方と私の人生が交わることがありませんように。ただこれだけを遠くから祈っております。