私は幼少期のころから成長の節々に、未来のわたしへの手紙を書くのが好きだったように感じる。
最初は学校の課題でだったのかな。課題じゃなく宿題、か。

どうせ先生のチェックが入ると思って半分繕って、半分本気で書いた。縦に読むと解読できるメッセージなんか入れて未来の自分をためしたりね。

過去から未来に送れても、未来から過去に送れないことはかなり申し訳なかったりする。
タイムマシンができても矛盾が命じるから過去にはいけないって聞いたことがある。

記憶を辿り、過去の私に出会っていく。まず思い出したのは幼稚園の頃

過去の私へ。
記憶を辿る。
私がまだ風のように体が軽くて、思考がまだ赤青黄の信号のようにシンプルでまっすぐだった頃。幼稚園生の私へ。

思い出す幼稚園は校庭の葉っぱが青くて、きっとまだ5月ごろ。家に帰りたくて仕方がないね。全てが体に馴染まなくていやだった。
朝、幼稚園に着くと園長先生に小さい袋をもらって、そこに木の蜜だとか落ちてる実、形のいい葉っぱ、どっから入ってきたのかだれかの小さな落とし物。、そんなものを詰めてみた。

あなたから手紙をもらったことはないけれど、きっとたくさんのことを感じていたよね。あなたの言葉を聞いてみたかったと思います。
また辿る。

小学生の私へ。今でもあの頃のことは、たくさん覚えています

髪が太くなって三つ編みの毛先がちくちくするようになったころ。小学生の私へ。
初めてあなたから手紙をもらったよ。先生のこと気にしたでしょ。あんまり内容がなかった。今なしにしていますか?夢は叶えましたか。あなたが伝えたかったことはなんだろう。

今もあなたの横にいつもいた子とは仲良いよ。それから高校になると急に算数ができるようになってるから心配しないでね。私は今でも母校の前をたまに通るけれど、外からも見えるあの大きなすずかけの木を見ると今でも見守られているきもちになるよ。
そしてちょっぴり胸が締め付けられる。あの頃できないことがたくさんあって、怒られること、たくさんあったね。

学校は楽しかったけど、あのころどういう顔で学校に通っていたっけ?夏服の水色のワンピースがよく似合っていたね。私は今でもあの頃のたくさんのことを覚えているよ。今のあなたはむしろ当たり前すぎて浮かばないだろうことがたくさん。

校庭の砂利の感触、たくさんの生徒が使ってきたロッカーの歪み、大人の手の大きさ。
三限目から始まる給食の匂い、前の席の子のジャージの編み目。それからドッチボールを胸でしっかり受けた時の全身が痺れる振動、鼓笛の大太鼓が心臓に響く感覚。
真冬のかじかみ、先生たちの大人の笑い、友達に借りた消しゴムからする他人の匂い、爪先立ちで歩いたプールの床、さようならのチャイムに焦って小走りで駆け下りる階段の音……。

そういう生活音がまるで自分をモニタリングしてたように鮮明に遠くから見えるんだ。それが懐かしくもあるし、なんとなく気まずくもあるよ。あなたは今何している頃だろう。明日忘れ物をしてないことを祈ります。

記憶は未来のわたしへの贈り物。明日もわたしはささやかな日常を作る

そしてまた時を辿る。
眩しい学校、お気に入りの学校、クリーム色のセーターからひだまりの匂い。高校生のあなたへ。

久しぶり!元気……そうですね。思えばあなたはこの学校に入って本当に正解だとおもいます。何から何まで違うこの高校のルールに戸惑っていた高一の年が嘘のように楽しくなります。
だから心配しないで。今の私はここがターニングポイントだったと感じています。

みんなで広げたお弁当や理由もなくお腹が痛くなるほど笑った放課後、全員ポンコツな体育の授業。いつまでも忘れないでと未来の自分にお願いした思い出、涙が出るほど悩んだこと。そのまま、迷わずに大切にしてください。
今の私は眩しくて目が開けられないほどの思い出になっています。あの日の思い出で私はあと100年生きられるほど。大切な思い出を作ってくれてありがとう。

時をまわす。
ゆっくりゆっくり、解けないように。
時をまわす。
手探りだけど感覚を信じてまわす。最後のあなたへ。

わたしです。きっとあなたが眩しかった頃と名付けてくれるだろう、あの頃のわたしです。
ここはのんびりしていて、雲も秋風にゆっくり揺られています。今年は金木犀が三度咲きしました。ベットの底の硬さと自分の鼻息だけが今あります。明日になれば、昨日お父さんと出かけて買ってもらったコートを着て少し早めの仕事に出かけます。
この頃の仕事は子供の勉強を見ることです。最近子供相手だと本音がするする出ることを知りました。いいえ、本音を本音だと認識もしてないような言葉たちです。とても暖かいです。

目を瞑ると、仕事場から見える空や子供のまだ柔らかい髪の毛、自分の頬の黄み、今日交わした言葉たち、来月の不安、まだもっと先の不安、うちで飼っている犬の毛の匂い。そういうものかぼやっと浮かんできます。

やっぱり、これらがきらきらしているのか分かりません。でもきっと今までのものがそうであったようにきっとこの日常もいつかのあなたには煌めくんでしょう。
記憶は未来へのわたしの贈り物です。最後にあなたが手に取る思い出がどれかは分かりませんが、たくさんの選択肢があるように、明日もわたしはささやかな日常を作ります。
またお手紙出します。それでは、これにて。ありがとう。