17歳の私へ
お元気ですか?
私は元気です。
そちらの窓には雪が降っていますか?
こちらは、そうですね、少し晴れてきました。
12年後のあなたは、きちんとした大人ではありませんが、楽しいです
私は今29歳なので、あなたの12年後ということになります。
12年後、どんな人間になっていると思いますか?
きちんとした大人になっているとでも思っていますか?
実際のあなたは、玄関の掃除をしながらCharaのモノマネをして熱唱している最中に宅配便のお兄さん(爽やか)が荷物を届けに来て「あ、お荷物です」と気まずそうに声をかけられるような出来事が起こるような人間になっています。
きちんとした大人にはなっていないかもしれませんが、楽しいです。
12年という月日は、長いようであっという間でした。
様々な事がありましたが、特に心配はしていません。
あなたは自分に必要なことを選ぶ勘が鋭いですから、全ての選択は正解なのでしょう。
ただ1つ心配事があるとすれば、1人だけ良くない男性とお付き合いします、その事くらいでしょうか。
どれくらい良くないかと言うと、お別れをした後ですが、放火で捕まります。
ですがやっぱり、心配はしていないかな。
あなたは自分にとって必要ではないモノを棄てることも、得意なはずですから。
あなたが大切にしているモノは、私にとっても大切なモノのままです
あなたが大切にしているモノは、私にとっても大切なモノのままです。
中学生の時から文通をしている山形県に住んでいる女の子、上京してからよく飲みに行って、今も大切なお友達です。
毎週聴いていたラジオドラマに出演している役者さんは、入学した専門学校の講師をしていて、後に直接お話できますよ。
繰り返し何度も何度も再生していた音楽達は、変わらず好きで、ずっと傍に置いてあります。
あなたが出逢ってくれたおかげです。
ありがとう。
喉の奥がつぶれそうになるくらい悲しい夢を見て目を覚ました時は、必ずあなたのことを引っ張り出して、横において、めそめそと泣いています。
そういう時に、どうしてもあなたのことを思い出すのです。
ひいおじいちゃんが買ってくれた勉強机に向かってピンクの椅子に座っているあなたの背中を、俯瞰で想像して、思い出してしまうのです。
でもね、そんな私の泣き声を聞いて飛び起きて、抱きしめてくれる人と一緒に住んでいます。
嘘じゃないです。
信じられませんか?
私もね、時々これは全部幻なんじゃないかと思う日もあるのだけれど、今のところ、消えていないからね。
どうやら本当に有り得ているみたいです。
すぐに見せてあげたい楽しい夜や道が、数え切れないほどあります。
今すぐ全部あげたいけれど、他の誰でもないあなたが必ずなぞってくるのだろうから、とっておきます。
ごめんね、あの時は私、あなたを幸せにしてあげられなかった
出す宛のない、読まれることのないあなたへの手紙を書くのは、これが最初で最後になるでしょう。
あなたと共に生きていくのだけれど、あなたのために生きていてはいけないと分かったからです。
事あるごとに、頭の中で綴っていました。
どこにも持っていくことができず、何百枚も、何千枚も溜まってしまいました。
はっきりと言葉にして残してしまうと、その後に消さなきゃいけないような気がして。
未練がましくて、悪いことをしているんじゃないかと思って。
だけどもう、言ってしまいたかった。
ごめんね、あの時は私、あなたを幸せにしてあげられなかった。
あなたにしがみついてしまうのは、もう止めにしないと。
あなたを溶かして、姿形を変えさせて飲み込み、今いる場所とは違う世界へ連れていくべきなのです。
それでは、あぁ、この言葉をあなたに言うのは初めてですね。
それでは、さようなら。