「結婚してください」
「はい。もちろんです」
眩しいくらいの煌めく指輪と、頬をつたる涙。

幼い頃から、「自分が結婚する」なんて信じられなかった

そんなドラマのワンシーンみたいな場面なんて、私に訪れることなんてあるんだろうか。小さい頃から、そんなこと信じられなかった。
けれど、今年の夏の終わりに、私にもその時は、夢ではなく現実に訪れた。今まで、「プロポーズされた瞬間に自然と涙が出ました」と言っているタレントの言葉を全く信じていなかったけど、自然と涙が出るとはこういうことか、と思わず頷いてしまうほど納得感があった。
そして、私の指にピッタリはまった指輪は、今までショーウィンドウ越しに眺めたことがあるどんなジュエリーよりも綺麗だった。

私も人並みに恋愛はしてきたけど、結婚は遠過ぎて重過ぎる存在だった

学生の頃から、人並みに恋愛はしてきたつもりだ。けれど、なぜか結婚というと残りの人生の全てをかけた固い約束のようで、私には遠過ぎて重過ぎる存在だった。
「この人と結婚は多分しないと思うけど付き合ってみよう」。今思えば相手に失礼だけど、そんな風に思ってお付き合いすることが多かった。非の打ち所がなくて自分にピッタリな人なんてきっと存在しないと思っていたし、妥協して結婚するのなんて絶対に嫌だった。

加えて、私は結婚に対して、夢がこれっぽっちもなかった。自分の周りの大人で結婚相手のことを永遠に大好きでいる人なんて、一人も出会ったことがなかったから。
結婚当初だけは舞い上がっていても、時間が経てば同じ空間にいるのも鬱陶しい存在になるんだろうな、そう思っていた。

結婚を決めてからも今までと変わらないけど、唯一「変化」を感じること

けれど、なぜか私は結婚することにした。自然と「はい。もちろんです」と言うことができた。
自分に一つも嘘をついていない、自分の人生の延長上にその結婚があると思ったから。自分にとって日々起こる一番嫌だったことや、恥ずかしかったことを自然と一番最初に話せる相手だから。なぜだかわからないけど、その人の隣で笑っている自分の笑顔が好きだから。だからなんだと思う。

結婚を決めてからも、もともと結婚式で着たいドレスもやりたい催しも、どうしても欲しい指輪のデザインもない私は、今までと変わらない日々を送っている。唯一の変化といえば、なぜか一人の夜でも寂しいなんて思わなくなったことくらい。

結婚ってなんだろう。
それは私にはまだ、わからない。けれど、「結婚って良いものかもしれない」。今はそう思っている。