大嫌いだった。強気で愛想のない態度も、トゲのある言葉も全部大嫌いだった。この人と僕は正反対だろう、それが第一印象だった。

僕の職場に転職してきた彼女とは、性格も仕事への価値観も真逆

僕の職場に転職してきた彼女は、僕の上司になった。話すことは、ほとんどなく業務上必要な会話だけ。必要な会話だけなのに、僕とは全然違うことが分かるほど、性格も仕事への価値観も真逆だった。
なんとなくではあるが、僕のことは嫌いなのだろうと感じた。出来るだけ波風を立てないようにと、そう思っていた。

転職してから、2、3ヶ月して彼女は、僕の直属の上司になった。会話はいくらか増えたが、それだけ。相変わらず、ぶっきらぼうな返答しかなくてあまり好きにはなれずにいた。でも、少し職場に慣れてきた彼女の笑顔が見られて、自分の気持ちとは裏腹に少し可愛いと思えた。

時が経つにつれて、僕と彼女は驚くほどお互いを信頼できるようになった

半年が経った。一緒に仕事をした僕たちは、僕自身も驚くほどお互いを信頼できるようになっていた。お互いの身の上話もしたし、今までの恋愛についても話してくれた。
何人かで食事にも一緒に出かけて、仕事について話すことも多くなった。彼女の笑顔を見るのが、何故か不思議と楽しみになっていた。

そして、1年が経った。彼女は、僕とは別部署へ異動になった。それでも、僕たちの信頼関係は変わらず、定期的に会っていた。部署が変わったあとも、年下の僕のことを気にかけてくれていた。
仕事をついつい抱えすぎる僕に「大丈夫?」と声をかけてくれる彼女の一言に、何度も救われた。彼女なりの不器用な優しさ、彼女が笑ってくれることが僕の幸せになった。

僕達は未来のことも考えるようになった。けど、「結婚」とはいかない

そして、今。相変わらず部署は離れたままだ。僕と彼女は、相変わらず2人でご飯に行き、仕事の話をする。たまに、彼女の買い物に付き合い、そして彼女の家でご飯も食べるようになった。
この先の未来のことも、考えるようになった。ただ、この先のずっと先の未来は多分、結婚とはいかない。それは僕達が同性として、今を生きているから。

大嫌いだった。強気で愛想のない態度も、トゲのある言葉も。
彼女が本当は弱い人間であることを見せないように、そして強くあろうとしていることに気付けなかった。今では彼女の弱さも、無邪気な笑顔も不器用な優しさも知ってしまった。
大好きに変わっていた。弱いところも、不器用なところも含めて。今まで想像さえできなかった一緒に暮らす未来を自然と想像できるくらいに。
この大好きな気持ちは、きっとどんどん膨らんで愛になるんだろう。届くことない想いを心に沈めて、そしていつか僕を愛してくれることを願って。
今日も僕はあなたのことが大好きです。