私は既婚者だ。3ヶ月前に結婚したばかりの新婚である。
結婚はあなたにとって良いものですか?と尋ねられたら、自信を持って"はい"と答えるだろう。
新婚だから気持ちが盛り上がっているのかと思われるかもしれないが、そういう訳ではない。9年付き合って結婚した夫とはずっと仲良しだ。
では、結婚をどう思いますか?と尋ねられたらどうだろうか。
もちろん幸せだという感情が1番初めに思い浮かぶが、時々寂しさを感じることがある。
こんなに幸せなのに、なぜ寂しさを感じてしまうのだろうと罪悪感を抱く。
そもそも私は恋愛・結婚に対する価値観が世間とずれていると周りから良く言われる。
結婚に関する憧れがかなり薄いのだ。
夫にはプロポーズはいらないと言ったし、婚約指輪も買っていない。
結婚式の予定も立てていない。興味はあるが、両親のためにやらなくてはという気持ちの方が強い。
結婚に憧れがあったら9年も恋人関係のままでいなかっただろう。
一軒家を買って、結婚を考え始めた。結婚しないデメリットが増えたから
そんな私が結婚を考え始めたのは家を購入した時だ。
私は籍を入れる前に当時彼氏だった夫と一軒家を買った。
周りの人たちは皆驚いていた。"結婚は?"と必ず聞かれたし、"度胸があるね"とも言われた。
結婚と家の購入の順番などどうでもよかった。
一生この人と生きていくという自覚はずっと前からあったし、狭いアパートより広い一軒家に住みたかった。
ただ、表札は夫の名字だけにした。深く考えず、当たり前のようにそうした。
引っ越した当初、まだ旧姓だった私宛の荷物はスムーズに届かなくなった。当然である。
仕方なく真新しい表札に養生テープを貼り、自分の旧姓を書いた。非常に格好悪かった。
ローンや保険、役所の手続きなど、夫婦でないと面倒なことが徐々に増えていった。
結婚したくなかった訳ではない。
いずれはするし、したいと思っていたが、結婚する理由もしない理由もなかったのだ。
結婚しないデメリットが増えてきたから籍を入れた。
絆がもっと深まった。結婚指輪も買った。夫の家族の一員になれた
結婚して良かったことはたくさんある。
夫とはもっと絆が深まったし、すごく大好きで世界一相性の良い人と結婚したと思っている。
色んな人におめでとうと言ってもらえたし、たくさんの方からお祝いをいただいた。
結婚指輪も買った。婚約指輪や結婚式にはあまり興味がなかったが、結婚指輪はなぜか欲しかった。夫とのお揃いが嬉しかった。
私は結婚指輪をつけっぱなしにはしていない。
料理やお風呂の時に指輪があると違和感があるので、家にいる時はケースに入れている。
でも出かけるときにはつけていく。夫も同じようにしている。
ふと指輪を見ると愛おしい気持ちになるし、時々つけ忘れてしまうとちょっと悲しくなる。
とても大切でお気に入りの指輪だ。
夫のご両親もとても優しい方だ。
以前は義実家に行くと"いらっしゃい"だったが、今は"おかえり"と言ってくれる。
入籍後、同じ名字になった私の免許証をお義父さんに見せた。
いつもお喋りのお義父さんが黙って嬉しそうに私の免許証をじっと見ていたのが印象的だった。
私も夫の家族の一員になれたことを嬉しく思った。
結婚して居場所は増えたけれど、両親を大切に思う気持ちを忘れたくない
その分、自分の実家が遠くなったように感じるのだ。
結婚して感じる寂しさの理由はきっとこれだ。
両親は相変わらずのんびりしているし、距離感も変わらない。
変わったのは私の方だ。
実家を出て数年経ち、冷蔵庫の醤油がどこにあるかすぐ思い出せないし、電子レンジの使い方にちょっと悩む。
ノールックで消せた電気のスイッチがどこだか分からないし、20年使っていたはずのお風呂のイスの低さにびっくりする。
さらに結婚をしたら、自分の居場所が増え、大切にしたい人が増えた。
その代わり、両親を思う自分の気持ちが薄れたように感じているのだ。
実は最近母親が体調を崩したので、ここ数ヶ月は週に1~2日は実家に帰っている。
結婚する前より会いに行く回数は何倍にも増えた。
会いに行く回数が増えたということは、実家から帰る回数も増えたのだ。
実家を去る度、ちょっと後ろめたい気持ちになる。
私は両親を大切に思う気持ちを忘れたくない、2人の娘であることを忘れたくない。
だから、
実家に帰る日は、
私は結婚指輪をつけない。