28年間生きてきたなかで、きっとそれは初恋だったと今は思う。
家族にも友人にも誰にもまだ話したことのない初恋の話がある。
もうきっと時効がとっくにすぎているだろうし、いい機会なので記憶として書き連ねることにした。

転校先のあだ名問題。嫌なあだ名にも慣れ、気にならないようになった

私は小学校中学年のときに都内に引っ越し、転校を経験した。
小さいときから仲の良かった友人たちとお別れすることは、寂しい気持ちがありつつも、新しい土地で生活することへの期待がとても大きかった。

人見知りではあったが新しい土地では友人に困ることはなく、休み時間は女の子たちと絵を描いたり、テレビの話をしたり、出だしからそれは普通の小学校生活を送っていけた。
しかし、「何てあだ名で呼べばいいか」という一つの問題があった。
このぐらいの年頃になると、男子たちは女の子をからかったり、ちょっかいをだしたりしてもてあそぶことが増えてきていた。そんな中で男子から私にようやく妙なあだ名がついた。とあるソースのキャラクターに似ているから、という理由でついたあだ名だった。

正直に言うと、本当に嫌だった。確かに似ていた部分があったことは今となっては認めるが、当時はもっとましなあだ名あるじゃないか、と思っていた。
ただ、誰からも呼ばれないよりかは何かしら声をかけられた方が寂しくないし、まあいいかと軽く受け流すことにした。
6年生に進級し、クラス替えを行った後も継続してそのあだ名で呼ばれていた。その頃にはもうあだ名に慣れて、私自身も何も気にすることなく楽しく毎日過ごしていた。

突然下の名前で呼ばれたあの日。思い出すだけで未だにきゅんとする

この出来事を思い出すたびに、いまだに少し胸がきゅんとする。
ある体育の授業中、クラスの中で数人リーダーの子が選別され、リーダーの指名制でグループ分けを行うことになった。

体育自体そこまで得意ではなかったので、どこかぬるいところに入れたらなと思っていたが、私が選ばれたグループのリーダーは学年の中でも学業優秀でさわやかでスポーツも万能で面白くて、という無敵ボーイだった。
グループ分けのあと、雑談をしているときにそれは起こった。
突然、私のことを下の名前で呼んだのだ。

口には出さなかったものの内心ものすごく驚き、顔面が真っ赤だったと思う。これまで下の名前で呼ばれたことがなかったので、その耐性は全くなかった。
名前で呼んでくれたのはその子だけだった。
あの瞬間は完全に恋だった。

「私のこと、好きでしたか?」思い起こす淡い記憶に抱く期待

思い返すと、その子とはいろいろなことがあったなと懐かしくなる。
席が隣になったときはノートを見せ合ったり。
体育の授業はほとんど同じグループだったり。
休み時間に1つの話題でずっと笑いあったこともあった。
同じ塾に行っていたから勉強の話もした。
修学旅行のときの男女1組の肝試しでも彼とペアになった。

その子は人気だったから、女子たちから代わってよって声をかけられたけど、「いや、いい」と断り、私と彼のペアだった。
怖いからって一緒に叫んだこともあった。
彼との時間は楽しい思い出ばかりだった。
私のことなどきっと眼中になかったとは思いつつも、1%ぐらいは気にかけてくれていた?少しは好きになってくれてた?と、今となっては本人に確認してみたいところである。

卒業後はそれぞれの中学に進み、電車の中でたまに会うことはあったものの、言葉を交わすことはなかった。
連絡先も知らず、そのまま私の初恋は空気となって消えていった。

もし彼がこれを見ることがあったら。
そういう淡い期待も抱きつつ思い起こした初恋の記憶。
いつか直接聞くことができたら聞いてみたい。
「私のこと、好きでしたか?」