「こんばんは」
そんな日常の挨拶から始まる某ラジオ配信アプリの1つの枠。たまたま飛び込んだ枠で聞こえてきた心地よい声をしてる男の子へ恋に落ちるのは、本当に一瞬だった。顔も本名もわからない、それなのに毎日毎日声を聞くたびに好きが増した。
ここまでなら普通によくある話だろう、だけど私には5年付き合っている彼氏がいた。
なんとなく、ただなんとなく聞いてみただけなのに。まさか好きになるなんて誰が想像できただろうか。

声だけで繋がった許されない恋の彼とついに会え、どんどん好きになる

ラジオで声を聞くだけじゃ足りなくて、ラインの交換をして毎日長電話した。朝起きても繋がってる電話、彼の「おはよう」の声で起きる幸せな1日の始まり。彼も私の事を好きになってくれて始まってしまった、許されない恋。
ある日、彼が電話で「会いに行くから会おう」と提案してきてくれた。
「会う!会いたい!会いたい!」
やっと声でしか繋がれていなかった彼と会える。嬉しかった。
そして、会いに来てくれた。彼には彼氏がいるだなんて言えなかったから、知り合いと会わないような所を選んで二人の時間を過ごした。
二人でいれる時間を無駄にしないように、たくさんたくさんキスをした。
夜は何度も何度もひとつになった。
少ない時間だったけど幸せな2日間を過ごして、彼は帰って行った。
会えない分、空いてる時間は出来るだけ電話して声を聞いた。本当に大好きだった。
そんな彼との終わりが近づいてることなんて、まったく考えてなかった。考えたくもなかった。

彼氏の子を妊娠。「最初から好きじゃなかった」と、彼に嘘をついた

「うっ」
夏になって、体調が優れない日が続き、「あんたそれ……つわりじゃないの?」と母に言われた。まさか……と思いつつ妊娠検査薬を使うと、すぐに濃い線が浮かび上がる。
陽性、私は妊娠していた。
彼とは4ヶ月前に会っただけだったので、お腹の子は5年付き合ってる彼氏との子だった。堕ろしたくはなかったので産むことに決めた。
同時に彼とはもう終わりだということだった。

「ぶっちゃけ最初から好きじゃなかったんだよね~!ごめんね」
って思ってもないことを彼に言ってお別れをした。
本当の事を言えないズルい女だったけど、きっと彼はこんな最低な女、忘れて生きたほうが幸せになれる。そう思い込むしかなかった。

別れても、ラジオ配信は彼の枠にハンドルネームを変えて内緒で聞きに行ってた。
「最初から好きじゃなかったんだよねっていう彼女の言葉は、本心じゃないと思うんだ」「そんな最低な子じゃなかったから何か、他に理由があったんだと思う」
そう、彼は配信で私の事を話していた。
私は最低な女なのに最後まで優しい彼だった。

5年付き合っていた彼氏とは籍を入れて、そのあと子供も無事に産まれました。
旦那にはバレてません。
今でも彼とのキスが忘れられない。