私には好きな人がいます。
その彼は、バイト先の社員さんでした。当時、20代後半で、でもフレッシュマンのような爽やかさと純粋さを持った不思議な魅力を持った人でした。
彼と何回か会話を重ねるうちに、同じ空気感を覚えるようになりました。
「この人なら私の気持ちを理解してくれるかもしれない」
それは今思えば、稚拙で幼稚な、恋に恋しているような気持ちでした。
ただ、彼は誰とでもフレンドリーで、それにとても嫉妬している自分がいることに耐えられませんでした。

振られても彼と繋がり続けたくて、子供っぽい策で彼からの連絡を待つ

場の空気を壊したくない。でも、彼が他の女性と会話しているのを聞いているとイライラして悲しくなって……切なくて、聞きたくないのに聞き耳を立ててる自分に嫌悪感さえ覚えました。
このままじゃ、私は「嫌な子」になると思い、適当な理由をつけてそのバイトを辞めました。辞める際に告白しましたが、振られました。理由は「過去のトラウマから女の子を可愛いと思えない」でした。
それから、私が考え出した策は、どうしようもなく子供っぽいものでした。恋じゃなくて、話し相手として彼と繋がり続けることでした。冬も迫る、秋が終わりかけの頃の話です。
一週間に一回か二週間に一回、不定期に彼と連絡を取り続けて、彼からの返信を待つ度にその定食屋さんに通いました。彼と定食屋さんに関連性はないのですが、私はひとりしっぽりとお酒が飲めて、好きな美味しい唐揚げ定食を食べれば、彼から連絡がなくとも頑張れると思っていたのでしょう。
それもあるし、偶然、彼と道端でばったり出会えないかと淡い思いを抱えながら、夜ご飯をそこで済ませていました。

「君と付き合うことはない」。心臓がえぐれるような痛みが心に残った

だけど、そんな奇跡が訪れることはなかったです。
この恋が最後、どうなったのか。
話し相手として赤い糸を繋ぎ止めようとしていることに彼は気づいたのか、ある時にこう言いました。
「今後も、君と付き合うことはないよ」
心臓がえぐれるような痛みでした。
結局、連絡は私から取るのを辞めました。連絡先を全部消して。
冬の出来事だったからでしょうか、とても手先が凍えていました。氷柱に貫かれたような痛みでした。
それから、2年、私は今でも彼のことをふとした時に思い出します。
好きなのだと思います。
もし、出会えることがあるなら、唐揚げ定食をご馳走したいです。
出会えることを祈っています。