結果私は彼の仕事には敵わなかった。1年前、「全部がタイプなんだよね」と告白されたときは、明らかに彼が私を追ってくれていた。でも、いつからか彼は仕事を追い、私が彼を追った。ベクトルはいつも一方通行だった。

彼は仕事に恋をし、モヤっとした私の投げかけも耳に入らない

「ラインが1日に1回なんてありえない!」と、私は、思い通りにいかなくて、モヤッとボールを彼に投げ続けた。でも、彼は仕事に夢中で、仕事に翻弄され、仕事に恋をしていたから、そんな言葉は全く耳に入らなかった。

彼はSEという自分の仕事が何よりの最優先、熱狂的に想いを馳せるものだった。「いつか何十億のプロジェクトを任されたい」そう語る彼の目は、いつもの落ち着いた彼ではなかった。悔しいぐらい眩しく目は生き生きとしていた。私は彼の仕事の話を聞くのはかっこいいから、嫌いじゃなかった。でも、もう少しこっちを向いてほしいとも思っていた。

私は彼が大好きだったのだ。ぽっちゃり体型の私に「5キロぐらいなら太っても好きだよー」と言ってくれる彼が。

彼の中で私は1番になれない。ファミレスで人目もはばからず泣いた

しかし、私は別れを決意した。なぜなら、ある日「結婚願望が今はない」その事実を知らされたからだ。ハンバーグを食べながら。彼の中で私はナンバー1にはなれないことが証明されたのだ。都内のファミレスで人目もはばからず私は泣いた。そして、私は心の中でこの恋の終わりを感じた。でも、最後の最後に別れのキスがしたくて、彼の甘い匂いを感じたくて、私からホテルに誘った。そして、その後もうこの人とは会ってはいけない、私から別れを告げなければ、という思いからバイバイしてすぐ、ラインで「別れよう」と伝えた。

彼は、恐らく今も結婚していないと思う。わからないけれど。仕事に精を尽くしてがんばっているだろう。あのとき、彼の最優先事項=仕事を理解して、寛大な心で受け入れてあげたら、違う未来だったのかなとも思う。私が結婚をゴールにしなければ良かったのかもしれない。でも、時期は違えどいつかは別れていた気もする。

幸せのカタチ、選択肢はたくさんあり、結婚しないという選択もある

彼からは、みんながみんな自分みたいに恋愛が1番ではないことを教わった。恋愛、家族、仕事、趣味。どこに重きをおくかは自由だ。色んな生き方があり、幸せのカタチ、選択肢はたくさんあることも。そのうちの一つに結婚しないという選択もあり、それが彼にとって今の幸せだということも。

最後のラインで彼は「〇〇(私)には幸せになってほしい」と言った。私も彼には仕事に精を尽くして、世界を相手にして、夢を叶えて、とことん幸せになってほしいと心の底から思う。

でも、仕事のことも忘れられるぐらい恋い焦がれるような素敵な人にも巡り会ってほしい様な気もする。余計なことだと思うけど。

ユニバーサルで肩を組んで撮った写真は前のスマホに入っている。たまに、見たくなるけど、もう見ないと決めた。ラインもアドレスも勢いで全部消したから連絡をとる手段もない。でも、いつかまた、初めてデートした唐揚げ屋さんで「仕事めっちゃがんばってるじゃん!さすが!!」って笑って言えたらいいのになと思ったりもする。