中学3年。受験シーズン。私は、うつ病と拒食症になったのだと思う。こんなことをおおっぴらに言えるようになったのは、ここ数年だ。あれから10年近く経って、ようやく。そのくらい時間をかけた。それで良かったのだと思う。

ちなみに、「うつ病と拒食症になったのだと思う」とは言ったが、精神科には最後まで行かなかった。つまり、うつ病も拒食症も、診断されたわけではない。あくまで私がそうだと思っているだけではある。

だから「私は発症したことがあります」とは言えない。もしかしたら、私がそう思っているだけで、勘違いかもしれないから。ただ、間違いないだろうなとは思っている。

小学校高学年の頃から太り始めて、「自分の体型」がずっと嫌いだった

子どもの頃から運動が苦手だった。部屋で本を読んだり、絵を描いたりしているほうが好きだった。それが原因なのか、小学校高学年の頃から太り始めた。

自分の体型が、ずっとコンプレックスだった。家族全員骨太で、私も例に漏れず骨太だった。胸板も厚い。がっしりしている。そのうえ太ってしまうと、あっという間にずんぐりしてくる。

かっこいいスキニーやスカートを着こなす同級生たち。自分も同じ服を着たいと思うけれど、自分が着ると別物のようになってしまう。

決定的だったのは、小学校の卒業式。ずっと憧れていた制服のスカートを着た。誇らしい気持ちで意気揚々と家を出た。同級生たちも同じ制服を着ていた。彼女たちの、すらっと伸びた脚に見惚れた。

帰宅して改めて鏡を見る。憧れの制服を着た私。見栄えはよくなかった。私は自分のずんぐりした太腿をつまんだ。

中3の受験勉強の時、食事の時間が取れなくてどんどん痩せていった

体型は変わらないまま、中学3年の夏。受験勉強、部活の大会などに追われて、食事の時間が取れなかった。みるみる痩せた。当時はこれが、本当に素直に、嬉しかった。

一度の成功体験を経て、私の食べる量はぐんぐん減った。食品のカロリーを調べられるサイトを見ることが日課になった。当時はそれがすごく楽しかったと思う。

冬が近づくにつれ、受験に向けた空気が濃くなっていった。度がすぎるほど心配性の私は「勉強しなければ受験に落ちる。受験に落ちれば人生終わりだ」と、そう思っていた。

受験が近づくほど、うつ病らしい症状が出始めた。毎日泣いていた。死にたいと何度も思った。うつ病が拒食症に拍車をかけたのか、その頃から食べる量がさらに減った。勉強の時間を増やして、食事の時間を減らした。

試験問題が解けるようになるのと同時に、体重も減った。死にたい毎日の中で、体重が減っているとわかる瞬間だけが救いだった。

日本人女性の平均身長の私が、1番ひどい時で30キロ台になっていたと思う。食べたら、太る。もう太りたくない。食事の時間が、恐怖でしかなかった。

勉強の甲斐があったのかなかったのか、私は第一志望校に面接だけの試験で合格した。受験のプレッシャーがなくなったことで、少しうつらしい症状も落ち着いた。泣くことは減ったし、死にたいと思うこともぐんと少なくなった。

うつのような症状が落ち着いたおかげなのか、春が近づいて、私はふと何か食べたいと思った。お腹は常に空いているのに、何か食べたいと思ったのは久しぶりだった。

母が用意してくれたのは、唐揚げだった。レンジで温めただけの冷凍食品の唐揚げ。随分久しぶりに、食べ物が美味しいと感じた。もういいか、と思った。ずっと否定し続けた自分の体型と、向き合ってみよう。

自分が思う理想の体型とは程遠いけど、私に「似合う」服装がある

あれから10年近く経って、大嫌いだった自分の体型と、20年以上付き合って。今も私は、私の体型が好きではない。憧れの体型とは程遠いし、してみたい服装は似合わない。

でも、自分の理想ではなくても、似合う服装もあると知った。そういう自分が、ほんの少し綺麗だと思える時が出来た。

自分を認めてあげること。それは、自分はこういうものなのだと諦めることと、どこか似ている。完璧ではないし、理想とは違うし、見栄えだってよくないけれど。それでいいのだと区切りをつけて、諦める。

聞こえはよくないかもしれない。でも、ぐっと生きるのが楽になった。それができるようになった私は、中学生の私より、きっと少しだけ綺麗になっているはずだ。