スープのようにサラサラとしていて味が薄いカレーライス。
味噌を入れすぎて、しょっぱくなってしまった豚汁。
この2品が私の忘れられない味だ。
これは私が一人暮らしを始めて1番最初に作った料理だ。一人暮らしを始めてたんだから自炊しなければ。そう思って作ってみたが、今まで料理なんてしてこなかったうえ、家庭科の調理実習ですら、上手くいかなかった人間のため、案の定、失敗した。
カレー用の野菜の水煮と豚汁の具の水煮がスーパーで売っていた。これとカレールーや味噌を使えば失敗しないだろうと思っていた。
このたった1度の失敗で嫌になった私は自炊をしなくなった。スーパーのお惣菜やコンビニのお弁当は美味しい。それに下手に光熱費をかけたり、使いきれない食材を出してしまうより、買って食べた方が節約になる。そう思った。

発達障害が発覚。「料理」というマルチタスクが苦手な原因が分かった

その5年後、発達障害の診断が下り、自分はそもそも「料理」というマルチタスクにまるで向いていないと知った。

材料の下ごしらえに、味付けに盛り付け。健常者にはなんてことない料理の過程が発達障害者にはとても難しい。出来ないこと無理にやる必要もないなーと思った。しかし、29歳になり、ずっと料理ができないのは悔しいなと思い始めた。
そこでネットで見たレシピをもとに料理を作ってみたのだが、やはりうまくいかない。

結婚して毎日のように料理をしている友人に相談したところ「ネットのレシピから入ろうとするのがそもそも間違い。もっと家庭科の教科書みたいに、食材の切り方とか細かく教えてくれるレシピを見ないとだめ。きょうの料理ビギナーズから始めて」と言われた。
きょうの料理ビギナーズは、初心者に向けて丁寧に説明してくれるNHKの料理番組だ。
早速、ホームページを覗いてみた。すると、なんと包丁の握り方から説明してくれていて、そう!そこで躓くの!という場面もポイント解説してくれており、とても助かった。
国営放送ありがとう。受信料は無駄じゃなかった。人生で初めてNHKに感謝した。

私が料理で苦手なことを理解し、ようやく立てた自炊のスタートライン

ここまで来てようやく気がついたのだが、私は初心者のくせに面倒くさがって、きちんと計量せず、目分量ですませたり、時間を測っていなかったり、アレンジをしようとするから失敗してきたのだ。
レシピ通りに調理すれば大きな失敗は避けることができた。いや、そんなこと分かるだろう。健常者はそう言うかもしれない。けれど、私は手帳持ちの障害者であり、一から十まで説明してもらわなければ、理解が出来ないのだ。

こうしてようやく、自炊のスタートラインに立てた。まだ、インスタに載せられるような綺麗な盛り付けは出来ないし、分量通りにやったはずなのに、味付けがおかしいこともあれば、食材に火が通りきっていないことも、しょっちゅうだ。まあでも続けているうちに、なんとなくコツがつかめてきた。カット野菜や便利な調理器具も世の中には溢れている。
いつか料理上手だね!なんて褒めてもらえる日も近いだろう!とりあえず2度とシャバシャバカレーとしょっぱい豚汁は作らないように注意したい。