これは恋じゃなくて執着だ。婚約しても忘れられない彼のこと

ダメだと分かっていても、やめられない。
私とNは同期だった。
5年前新入社員研修の時に同じクラスになり、野球の話をしたのがきっかけ。
社会人になって調子に乗っていたんだと思う。
彼にとっては一時の感情だっただろうし、私も言われたから付き合っただけだから「恋人」という関係は長くは続かなかった。
その後、私は東京配属、彼は大阪配属となり、会うこともラインのやり取りもなくなったけど。
それでも仕事で大きなトラブルがあれば、「彼は無事かな……」とずっと気になっていた。
たった一か月ほどの関係だったけど、私にとって彼は同期以上の大切な人だった。
だから突然「今度東京行くんやけど、面白いとこあります?」とラインが来た時は本当に嬉しかった。
それからというもの、
「今日報告書を書いたでしょ?笑」
「大阪で地震あったけど大丈夫?」
と半年に一度くらい連絡するようになった。
何でもないようなやり取りだったけど、彼からラインが来るたびに私のことどう思ってるのか、会いたい、と新入社員の時の甘い気持ちを思い出していた。
「Nが『うまくいかなかったけど、俺ははるちゃん(私)みたいな優しい人が合うんだと思う』って言ってたよ」と他の同期から言われた時には嬉しくて切なくて。
もう一度彼と向き合いたい。
でも私には勇気がなかった。
社会人4年目の夏、いつものように突然Nからラインが来た。
「一回くらい大阪で遊ぼうや!笑」
どうしよう。
その時私には彼氏がいて、「婚約指輪を買いに行こう」と遠回しなプロポーズを受けていた。
「でも私今彼氏いるから……」
「ええやん笑 変なことはしませんので!同期だし!」
変なことを考えて期待した自分が恥ずかしい。
同期とご飯食べるだけだし一回だけなら……良いよね。
そんな浅はかな気持ちで私は大阪に向かった。
ごめんなさい。
でも。
「変なことはしない」なんてそんなはずがなかった。
一緒に過ごしたこの一晩で、私は4年間ずっと忘れようとしていた気持ちを再確認してしまった。
婚約者のことは好きだし、結婚するならあの人しかいないと思っている。
でもNのことが忘れられない。
自分でも何がしたいのかわからない。
安いラブホテルの一室で、このままずっと二人だけでいたかった。
「多分来月プロポーズされると思う」
帰り支度をしながら彼に告げた。
彼の表情は見えなかったけど、一言そっけなく「そっか」と返された。
少しだけ、悔しがってくれるのを期待していた。
次の年の春、私は婚約者と入籍した。
SNSで報告の投稿をしたけど、彼からの「いいね」はなかった。
これで彼に対する気持ちも終わる、そう思っていた。
彼からのラインは少し内容を変えた。
「電話で喘ぎ声を聞かせてほしい」
「下着の写真をおくってほしい」
普通の女性なら確実にブロックしているだろうし、常識のある既婚者ならスルーするだろう。
私はそのどちらでもなかった。
夜勤がある主人の留守を狙って、私は彼の相手をし続けた。
Nがしたいのは性欲の発散だけなのに、私は「必要とされている」と勘違いしていた。
私が結婚して間もなく彼に彼女ができた。
SNSに投稿された、小柄で美人で色白の彼女の写真。
彼と手をつなぎ見つめ合う彼女を羨ましいと感じるのも、結婚したのにまだ引きずっているのも、SNSで彼の投稿を待っているのも、全部苦しかった。
新婚の私がこんな事で悩んでるなんて人に言えるわけがない。
主人にバレたら、Nの彼女にバレたらどうしよう、考えてもSNSのチェックがやめられない。
そんな私の気持ちに気付かずに、Nから変わらずにラインが来る。
「私のことなんだと思ってるの?笑」
「はるちゃんは性欲強い女子やろ 笑」
あなたの中で、私は「同期」から「都合のいい女」になってしまったんだね。
こんなのは恋じゃない。
今でも彼からは体目当てのラインが来る。
恋心が変化したこの執着心が早く消えてくれることを、私は願っている。
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