手紙をもらった。2年経過した今でも大切に保管している。
彼女自身のツイートによると、初恋だったそうだ。そして私は、同じ女性である彼女の愛に応えることはできなかった。
裏垢で出会い、仲良くなったYさんの想い。薄々気づいてはいた
3年ほど前にTwitterで裏垢を作った。よくあることだ。イマドキ珍しくもない。
日頃から社会での生きにくさを感じていた私(当時21歳)は、その想いのはけ口にアカウントを作った。そこでつながる人々は何かしら生きづらさや人生に疑問を持っている人ばかりで、現実よりかは居心地が良かった。
そこで出会ったのがYさん。私よりひと回りも年上の女性で、いわゆる「夜のお仕事」をしていた。
Yさんは、天真爛漫な女性で、多少、女性特有の意地悪な部分を持ち合わせてはいたが、基本的に常識的で優しい人だった。私はというと、情緒不安定でよくDMで相談に乗ってもらっていた。
同じくTwitter上で私のアカウントのIDを使ったトーク画面のコラ画像(私が酷い発言をしたことになっているトーク画像)を拡散され、理不尽な攻撃に遭っていた時も、彼女は私を信じてくれたし、仲間と一緒になって守ってくれた。そんなこともあってか、私たちの絆はより一層強くなっていった。
アカウントを創設して何ヵ月目かのこと。私はDMでYさんに告白された。もちろん恋愛対象として。Yさんの想いには、薄々気づいてはいた。返信やその内容が他の人と比較して好意的なものが多かったからだ。
プレゼントと一緒に画面の中だけだった相手が、現実にやってきた
でも、気づかないようにしていた。実は、同性に告白されることは初めてではなかった。
しかし私は異性愛者であり、人間不信者でもあった。混乱していた私にYさんは「想いを伝えたかっただけ」「これからも友達として」と付け足してくれた。
数日後、誕生日間近の私にYさんがプレゼントを贈りたいと言ってきた。さすがに住所を教え合うのは抵抗があったからお断りしようとしたところ、匿名で配達できるサービスがあるらしく、私はその申し出を有り難く承諾した。
しばらくして、家にB5サイズほどの段ボール箱が到着。中身を確認すると、小型カイロ数枚と映画に使えるプリペイドカード、手紙等が入っていた。嗅いだことのないとても良い香りがした。彼女の香水かは不明だ。
カイロは、私が「生理が重くてつらい」とよく呟いていたから。映画は、「『アラジン』が観たいけどお金がなくて観に行けない」と呟いたから。
私は泣いた。申し訳なくも思った。彼女を利用している気分にもなった。
SNS。画面の中の文字だけだった相手が、現実にやってきた。手紙の手書きの文字を見た瞬間、私の廃れた心は彼女の愛によってリカバリーされ、しばらく泣き続けた。彼女とは住む地域が離れているのもあって、別々の映画館で同じ時刻に同じ映画『アラジン』を鑑賞した。
彼女との最初で最後のデートだった……。
お互いにとって、意味のある出会いがきっとある。私はそう信じる
現在、当時のアカウントは使用していない。彼女ともほぼ連絡を取っていない。たまにTwitter上で挨拶をしたり、いいねをもらったりするのみ。
SNSの使い方は人それぞれだ。それも十人十色どころじゃない。複雑に思いが絡み合うSNSで、お互いが求めるものが一致することは、大変難しく思う。それに表情も見えないから感情がわかりづらい。文字のみコミュニケーションは、誤解を生む種になりやすいのだ。また、匿名であることもトラブルの原因となっている。
それでも私がTwitterを続ける理由は、Yさんと交わしたような情緒的なコミュニケーションがごく稀に発生するからである。お互いにとって、意味のある出会いがきっとある。私はそう信じてこれからもSNSを続けるつもりだ。