「よく出来たね」
「さすが、良い子ね」
いつからか分からないけど、小さい頃から私は両親に褒められることが好きだった。正確には、喜んでいる両親を見ることが好きなのだ。
反対に、両親が悲しんだり風邪をひいたりと苦しんでいる姿を見るのが一番辛かった。そして、それは28歳になった今も変わらない。

社会人になると、「両親が知らない私」が増える。
日付が変わっても外でお酒を飲んでいる時のだらしのない姿、「海外出張」と言えば聞こえは良いけど本当は上司の手伝いばかりでいっぱいいっぱいなこと、そして、仕事帰りの電車内でよく、理由はなくとも自然と涙が頬をつたること。
全部「私」の一部だけど、そんな私は両親には知られたくない。私の泣き虫は両親から譲り受けたもので、そんなことを聞いたら、両親はきっと目を真っ赤にしてしまうから。
だから、両親には、上司に褒められたこと、身の回りの友達に起こった良いニュース、最近買った新しいお気に入りの服なんかの話を大袈裟に楽しそうに、冗談を交えて話す。その話を聞いて、両親は私が小さい頃と同様に、自分のことのように喜んでころころと笑ってくれる。その時間が私はたまらなく好きなのだ。

でも、来年お父さんとバージンロードを並んで歩く前に伝えたい。絶対、直接は言えないけど、必ず伝えたい。
「全然良い子なんかじゃないのに、今まで育ててくれてありがとう。これからは私のこともう少し頼ってね」