その年に初めて雪を見たある寒い夜に、3年ぶりに彼に会った。久しぶりに集まった高校の友達との飲み会の二次会から、彼はやってきた。
相変わらずかっこいいなぁ。高校時代、恋をしていた彼
彼は、シュッとした背格好で、ロングコートがよく似合う。さらに、彼の長い指にはタバコが一本。相変わらず、かっこいいなぁ……。
私は、思わず声が出てしまいそうになるのを抑えた。彼は、一通り仲の良い友達に挨拶した後、私を見つけ、声をかけてきた。
「久しぶりやな。元気してるん?」
ほんと、相変わらずだなぁ……。
「元気やで。そっちこそどおなん?」
声が裏返らないように必死に平静を取り繕う。
昔からだ。昔から、彼と話すときはドキドキしてしまってうまく話せない。それなのに、彼はそんなこっちの気も知らず、平然と話しかけてくる。
彼は、モテる方ではなかったが、サッカー部のいわゆる陽キャだった。私から見ると、いつもキラキラしていた。完全に恋していた。
1年間付き合ってあっさり別れた彼と、語り合った夜
そんな彼とは、高校3年生の時に1年間、付き合っていた。私が、すごく好きなことが、クラス中に伝わり、お互い意識するようになり、付き合ったのだ。
でも受験勉強に忙しかった私たちは、あっさりと別れてしまった。大学生活で楽しく過ごしていた私は、高校時代の最後の恋を思い出すことはあっても、大学入学を機に県を出てしまった彼に会えることは諦めていた。
滅多に帰省しない彼が帰郷している噂は聞いていたが、3年ぶりに彼に会えるとは思ってもみなかった。しかも、一緒にお酒が飲めるなんて!
緊張と照れを隠すために、普段以上にたくさん飲んだ。彼も私と同じように飲んだ。私たちは、お酒の力を借りて、元の関係に戻ることができた。大学生活や昔のことを語り合った。
あの日に戻れるのなら、彼を遠くで眺めながら恋をしていたい
飲み会の途中で抜け出すことになった。寒い屋外で、彼は手を握ってくれた。話し足りずに2人で店を変えて、話していた。
その後、フラフラの私たちは夜を共に過ごした。次の日、二日酔いの私たちはそれぞれの家に帰り、彼からもそして私からも連絡を取ることはなかった。
あの夜、私たちはこんな簡単にあの日々に戻ることができるのかと、呆気なく思えたのだろう。それほどまでに、高校三年生の1年間はキラキラしていた。
あんなに綺麗な思い出の中での恋が一晩にして、現実になったのだ。もし、あの日に戻れるのなら私は、彼を遠くで眺めながら恋していたい。そして、あの頃はよかったと思い出に浸るだけにしておこう。