中高生時代、ネットで遊び、学んできた。
時に学校の友達には言えない愚痴や悩みを、ネットの世界でしか繋がっていない友達に打ち明けたりもした。

ネットで出会った様々な人と仲良くなるうちに、現実でも会うことに

会ったことのない友達とのやりとりには独特の緊張感があったが、所属による縛りがない分、現実世界の友達付き合いにはない気楽さがあった。

ネットの友達には現実では出会えない、様々な人がいた。
精神疾患があり引きこもっている人、都会の進学校に通う高校生、部活に燃える中学生、大学受験を控える予備校生……。
住む場所も性別も学年も違う人たち。共通点は、皆10代だったことくらいだ。
皆自分のブログをもっており、互いのブログを訪問してはコメントを残し、そのコメントに返信してやりとりしていた。
私もほとんど毎日ブログを書き、友達のブログにコメントを残し、チャットでおしゃべりをしているうちにタイピングの速さは誰にも負けないくらいになった。

仲良くなるうちに、現実でも会おうという話が出てきた。
家族や学校の友達に知られると、危ないから止めるよう言われることが分かっていたので、誰にも言わずに計画を進めた。

学校の友達と何も変わらない、ネットで出会った「友達」との時間

ネットで出会った人と初めて会ったのは、高校生の時だった。家の近くだと家族にばれる恐れがあったので、学校の最寄駅で会うことにした。
3つ年上の予備校生だった。この時初めて本名を知り、電話番号やメールアドレスを交換した。
駅前のファーストフード店でポテトとジュースを注文して、とりとめのないおしゃべりで時間を潰した。ゲームセンターでプリクラを撮った。学校の友達と何も変わらない「友達」との時間だった。

次に会ったのは、1つ年上の高校生だった。
都会に住んでいる彼に合わせて、私が出向いた。親には「大学のオープンキャンパスに行く」と嘘をついた。
動物園をぶらぶらと歩き、カフェでお茶を飲んだ。特に理由はないが、雰囲気で手を繋いで歩いたりした。
日暮れまで歩き回って新幹線の時間まで暇を潰した。

それから何人かネットの友達と会ったことがあるが、今でも友達として付き合いのある人は誰もいない。
ちょうど中高のクラスメイトのようだ。
当時はくだらない話で笑ったり納得できない感情を演説したりすることに気力のほとんどを費やした。
今では考えられない熱量で、全てに対して挑んでいた。

ネットの友人と同窓会をしたら、皆どんな大人になっているのだろう

ネットの世界で青春時代を過ごしてきた者としては、SNSを危険と切り捨ててしまうのはなんだか切ない。
だが、ネットでよからぬ事を企む人はごまんといる中で、危険な人と出会わなかったことは単にラッキーだっただけなのも事実だ。
もし自分の子どもが同じようにネットの友達に会おうとしていたら、やはり親として止めるだろう。
あの頃よりもSNSと現実世界の距離感は、良い意味でも悪い意味でも近くなった。
写真や動画が溢れた世界に、10年前だったら怖がらず飛び込むのかもしれないが、アラサーとなった今は自分では怖くて発信できないことばかりになってしまった。
今ではすっかりSNSから遠ざかってしまった。

ネットの青春時代を共に過ごした古い友人をたまに思い出して懐かしくなる。
同窓会があったら皆どんな大人になっているのだろう。
地元に帰ったら会えることも、風の便りが来ることもないので全く分からない。
分かり合えなかった話題や、気まずかったあの時のことも、彼らのことを考えない時間が増えたから綺麗な思い出になっているのかもしれない。
ぼんやりした記憶だから良い思い出なのだろう。
出会ったのがネットだとしても、学校だったとしてもそれは変わらない。