中学から、プレゼントは現金だった。お互いスッキリしていい

プレゼントの贈り主がサンタさんではなくなってからどれくらい経つだろう。確か5歳か6歳くらい。それまではサンタさんに手紙なんて書いてねだっていたプレゼント。

玩具屋さんに連れて行ってもらって、当時流行っていたゲームボーイとポケモンのソフトを「サンタさんの代わりね」と買い与えられてから、サンタさんはいなくなり、クリスマスプレゼントとは両親が買い与えてくれるものになった。
小学校も高学年になると、予算内で、なんて言われて限度額を上げるために両親に必死でおねだりしたのもいい思い出だ。

サンタの正体なんて随分早くに親だと気づいていたから、「今年は何が欲しいの?」なんてやり取りをする前に、中学生くらいには現金をそのまま渡される様になっていた。
プレゼントとしては生々しく感じるが、「これで欲しいものを買ってね」と渡される方がお互いにスッキリしていい、なんて思うのは私だけだろうか。
そんな風に考えているから、今はプレゼントなんて贈ってくれる人もいなくて、自分へのご褒美なんて名目でコンビニのケーキを自分で自分にプレゼントしているのだろうか、なんて思いもする。

名前も知らないカップルの幸せを手助け。夢のある仕事だ

12月にもなると、勤め先である家電量販店には彼女に内緒でプレゼントを買いに来る男性が増える。
彼らのお目当ては、平均して3万円くらいのドライヤーをはじめとしたエステ商品。口々に「こういうのよく分からないんだけど、どれがオススメなの?」と聞いてくる彼らは、それでも何処か浮き足立っていて幸せそうだ。
自分がもらえるわけでもないのに、「私なんかはコレとかもらえると凄く嬉しいですよー」なんて商品をオススメする。一抹の虚しさを覚えなくもないが、名前も知らないカップルの幸せの手助けをしていると思えば夢のある仕事だ。

ラッピングした商品を持って彼らが店を出て行く背中は、心なしか達成感に満ち溢れてみえ、送り出すこちらもなんだか幸せな気分になる。
心が荒みがちな量販店勤務の中でも心が温まる瞬間だ。

望まれないプレゼントたちの事務処理をしながら

そうやって慌ただしくしているうちにやって来たクリスマス当日。プレゼント需要で賑わうレジに見たことのある顔を見つけた。先日一緒に美顔器を選んだ男性だった。

順番が回って来た彼は、言いにくそうにラッピングされた商品をレジ袋から取り出すと、一言「返品したいんですが……」と口にした。
こちらもお仕事なので、はいそうですかと返品を受けることも出来ない。何故返品したいのか、なにか商品に不具合でもあったのかと失礼にならない程度に問いかけると、男性はますます肩身を狭そうにしてこう言った。
「いらない、って言われたんです」

欲しかったゲームソフトを買ってもらってはしゃぐ子供の横で、彼のその声は消え入りそうに小さかった。私も面と向かってそう言われるとなんと反応していいかわからず、陽気なクリスマスソング流れる店内で暫くお互い沈黙してしまった。
幸い未開封だったので、面倒な手続きもなく返品はものの数分で完了した。けれど、開封もされていないプレゼントを返品して帰って行く男性の足取りは重く、心なし背中も小さく見える。

リサーチ不足なのか、サプライズの失敗なのか、プレゼントを返品に来る男性は毎年一定数いる。その度に、気まずい思いをしながら事務処理をする。
男たちよ、頼むから、彼女を連れてプレゼントを買いに来てくれ。それが出来ないなら、きちんとリサーチをしてくれ。
それとも、女たちよ、頼むから、その場ではプレゼントを受け取って、後からメルカリに売ってくれ、だろうか。
師走の今頃、慌ただしくレジを打ちながら毎年そんなことを思う。そんなクリスマスの思い出。