たまたま出会った寮長にふざけて話しかけた。それがきっかけだった

生まれて初めて、好きな人に告白したのは短大1年の秋。サークルの先輩だった。あっけなく玉砕し、例年通り彼氏もできぬままクリスマスを迎えようとしていた。

当時私は短大の女子寮に住んでいて、けっこう緩めの自治寮だったので、休日など彼氏や友達の家に外泊する子は周りに何人もいた。玄関付近に各部屋の名札があり、その名札の表裏で寮にいる、いないが一目でわかった。
クリスマス当日はもちろんいない人のほうが多い。予定も特になく、レポートでもしようかと思っていた。
日中は美容室に行き、1人ランチ、夜はレポートが終わったらバイトから帰った友達と部屋で飲もう。そんなことを思いながら、髪型だけはきまったまま(特に予定はないが、気分を変えたかった為パーマをかけた)スウェットに着替えた。

すると、隣の部屋のガチャっという音が聞こえた。寮長だ。
私の部屋の横は、寮長をつとめていた先輩だった。ボーイッシュでかっこよく、誰とでも分け隔てなく接することができる人でサークルでも大学でも一目置かれる憧れの存在だった。
その寮長に、何を思ったのか、クリスマスプレゼントにボケて「コチュジャン」でもあげよう、と考えた。
どういうノリなのか今考えても不思議だが、その日たまたまコチュジャンが安く手に入ったのと、そういう意味不明なノリでも笑って返してくれるだろうという安心感を持っていた。

さっそく、箱入りのコチュジャンを手に隣の部屋の寮長を尋ねた。
「寮長、メリークリスマス!」
「え、コチュジャン(笑)」
予想どおりの反応だった。
「あ、今日ひま?これから出かけるけど来る?」
寮長は顔が広く、他大学の人とも交流がある人だった。いつもなら臆していたかもしれないけど、そのときはついノリで「行きます!」と返事していた。それからすぐにスウェットを脱ぎ捨てコートを羽織り、自転車で駅前付近まで寮長の後を追って走った。

合コンも行ったことないのに…戸惑いながら臨んだ街コン

着いたのはライブハウス。女同士で飲むのかと思いきや、そこには「ライブハウスクリスマス街コン」とあった。
えぇーー!合コンにも行ったことがない為、焦った。しかし来てしまった以上引き返せない。寮長は颯爽と中に入り、ライブハウスに先に来ていた女の人の隣に座った。
テーブルがいくつかあり、男女がそれぞれに3人ずつほど着いている。これから席を周り、色んな人と話していくようだ。場馴れしていなかったが、色んな人がいた為、3対3の合コンなどに比べれば敷居が低く思えた。行ったことないけど。

しばらくゲームや席替えタイムがあり、色々な人と話した。どうやら年齢層はわりと高く、大学生の若いグループは私たちともう一組であった為、年の近い同士で最終的には一番長く喋った。
その一組は、ぐいぐい来る系の男子とそれを笑いながら見守る系男子だった。
正直なんとも思っていなかった。男というよりクリスマス料理がおいしいなぁとか、カクテルがおいしいなぁとか、そんなことばかり考えていた。

友達の隣でにこにこ話を聞いていた彼の顔を思い出していた

時間が過ぎ二次会に行く途中に、雪が降っていた。凍てつくような寒さだけど、お酒に酔ってぽわんと心地良かった。
その時ふと横には、先ほどの見守る系男子がいた。「寒いね~」「雪降ってるね」と当たり障りない会話をした。
二次会のバーでも大学のことや何でもないことを話した。なんともないような気がしたけど、帰ってから思い出すと、ぐいぐい来る系男子のぐいぐい話を横でにこにこ聞いてる顔が良かったな、と思った。

それからしばらくメールのやり取りをして、私たちは付き合った。なんやかんや色々あって、その後旦那さんとなった。
こうして考えると、発端は意味不明なコチュジャンから始まってるけど、好きな人や憧れのものに導かれるタイミングってあるのかもしれないなと思う。フットワークはいつでも軽くいたい。
ちなみに付き合って結婚したこと、寮長に伝えたらそれは驚いてました(笑)。