8年ぶりに祖母に会った。

祖母とはもともと一緒に住んでいたが、今は介護施設で暮らしている。
その日、定期的に施設に通っている母に、冬用の布団を持って行くから車を出してほしいと頼まれた。
母は私に祖母の話をあまりしない。だから私も聞かずにいた。
祖母に会うのはおそらく、振袖を見せに行った成人式の日以来だった。

8年ぶりに会った祖母は、痩せ細り、ひと回り小さくなっていて、自力では歩けず、母が話しかけても首を振ることしかしなかった。
ボケてはいないようで、「久しぶり」と声をかけると、笑ってくれた。

部屋の壁には、祖母の誕生日に撮った写真と、施設の職員からのメッセージが飾られていた。祖母は83歳になっていた。

祖母の目に、今の私はどう見えているのだろうか。28歳になった私は、学生の頃のままだろうか。それとも、少しは成長しただろうか。
祖母にあれこれ話しかけながら作業している母の背中を見ながら、いつか私もこうやって、母の世話をする日が来るのだろう、と思った。祖母はそんな母をじっと見つめていた。

血縁。歴史。受け継がれていく命。
母は祖母の娘で、私は母の娘。それは何にも代え難い、愛おしい事実。

身支度を済ませた頃、面会時間に終わりが来た。「またね」と声をかけると、祖母は笑ってくれた。
私の知っている祖母がそこにいた。

また会いに来るから。
長生きしてよね、ばあちゃん。

よく晴れた、暖かい午後だった。
我が家族の幸せを祈りながら、私は夏用の布団を車に積み込んだ。