旅行って、すごく楽しいことだと思う。
誰かとワイワイ行くのもいいし、一人で行くのも趣があっていい。
だけど、ここ数年は某感染症の影響でどこにも行けなかった。それと私は学生でお金もあまりないし、身体も強くないので、頻繁に遠くに行ったりはできない。

「図書館旅行」なら世界一周もできる。想像力でその空気を感じとる

そんな私でも楽しめる旅行がある。「図書館旅行」だ。
図書館に行って、観光地や異国に関する本をたくさん借りてくる。
それを家で眺めてウキウキするのが、図書館旅行。

写真なら、どんなに遠くても、どんなに過酷な場所でも、手元で見られる。ついでに解説がついていたりするので、ガイド代わりにそれを読むのも楽しい。一日で世界一周旅行もできるし、なんなら宇宙まで飛び出せてしまう。

今時、そんなの動画を見ればいいのでは?という人もいるかもしれない。だけど、図書館で羅列された国名やタイトルを眺めるあの面白さは、動画サイトにはないものだと思う。自分の知識にない地域や、語彙にない言葉を知ることができるのも、本ならではの良さだ。

想像力を全力で働かせて、美しい写真や文章から、その場所の空気を感じ取る。一種の現実逃避みたいなものだ。
もちろん本物の空気には及ばないけれど、いつか行ってみたい場所の予習として、心に留めておくのもよいと思う。もし行けたときには、写真と実物の違いに、よりいっそう心を打たれるかもしれない。

さみしい療養生活の中、図書館の本が広い外へと世界を広げてくれた

私たちの多くは、普段は決まった場所に通って、決まったことをすることでお金をもらっている。そうすると、固定された人間関係の中でどんどん視野が狭くなって、どんどん苦しくなっていくことがあると思う。

気が付いたときには、旅行なんて言葉すら浮かばなくなっている……。どこか遠くへ行きたくても、消耗しきっていてそんな気力も時間もない。そのくらい、追い詰められることもあるだろう。

私は実際そうなって、家で寝たきり状態になったことがある(今もそうだけど)。そのとき、世界の美しい風景の写真集を図書館でたくさん借りてきて、枕元に置き、夜な夜な眺めては癒しをもらっていた。

あまりの美しさに涙が出ることもあった。さみしい療養生活の中で、写真集や旅行ガイドが、家から広い外へと世界を広げてくれた。調子が良くなったらきっとここへ行くぞ、という回復への希望にもなってくれた。

現実から逃れたいとき、知らなかった場所や文化に触れるきっかけに

もちろん実際に行くのもよいと思う。行く先を調べる楽しさや、荷造りのわくわく感、旅先での出会いや写真を撮ることも、旅の醍醐味だ。
だけど、それだけが旅の形ではないような気もする。

外に出られなくても、お金がなくても、人見知りでも体が弱くても、楽しめる旅の形はきっとたくさんある。最近ではオンライン海外旅行なるものも見かけるし、探せばもっといろいろな形があるかもしれない。

ちょっと生活に疲れたとき、現実から逃れたいとき。一念発起して遠くへ出かけてみるのもいいけれど、より一層お手軽で身近な手段として、図書館へ旅行してみるのはいかがだろうか。今までは全く知らなかった場所や文化に、少しでも触れるきっかけになるかもしれない。