今思い返せばくだらない、どうでもいいことだと思える。でもあの頃は、みんなの「いいね」が欲しくて仕方がなかった。

クリスマスプレゼントをSNSにアップ。これが全てのキッカケに…

自分でお金を稼ぎ、お酒も飲めるようになった。ついこの間までが高校生だった私たちにとって、大学生は随分と大人びて見えた。
大学生になってから出来た年上の恋人は、高校の時の彼とは随分と異なり、車を運転したり、デート代を奢ってくれる。自慢の恋人だった。
大学で出来た友人達とも、クリスマスが近づくとどこにデートに行くのか、プレゼントは何を贈るかと授業そっちのけで浮き足立っていたのが懐かしい。手作りのお菓子も焼いたり、我ながら彼女らしい行動をしていたものだ。

高校生の時に出来た彼は初めての恋人で、彼の気持ちが離れていることが分かっていても意地になって別れることはなく、結局3年間付き合い、受験を前に振られた。クリスマスもカラオケに行ってマフラーを贈りあったりと、まぁバイトもしていない高校生ならこんなものかな、という思い出しかなかった。
友達のデートの話を聞いて、内心悲しみ、むしろ彼氏いない組でのパーティに行きたかった、後悔の3年間だ。
だからこそ、大学生になったら私でも少女漫画のようなキラキラした思い出が作れる、そう信じていた。

最初の彼はクリスマスに一緒に行こうと、ディズニーランドのチケットをくれた。チケットを貰ったら即座に写真を撮り、SNSにアップした。
今思えば、友人からの「いいね」が中毒になったのはこれがきっかけだったと思う。素敵な園内の写真も沢山撮り、たくさんのいいねやコメントを貰った。

だが、満足したのも束の間、その後友人が身につけていたアクセサリーに私は嫉妬した。友人の恋人は格好良い、お洒落だと言われていただけあり、素敵なピアスだった。
私の手元には何も残っていなくて、なんだかイライラしてしまったのを覚えている。

クリスマスのためだけに付き合ったといっても過言ではない彼

その後彼とは別れ、クリスマスを1人で過ごしたくなかった私は、12月初旬、「付き合ってもいいな」と思える男性に猛アタックした。
クリスマスのためだけに付き合った、と言っても過言ではなかったと思うが、不純な動機は別として、彼もとても優しい人だった。

付き合って最初のイベントがクリスマスとなった私たちだったが、彼にサプライズで連れて行かれたのは東京タワーだった。私は東京出身ではないので、東京タワーに来たのはこれが初めてのことだった。
綺麗だな、と思いつつ、プレゼントはタワーに入った入場料で終わりじゃないよね?と内心不安に思う、最低な女だった。

「前を向いててね」
彼に言われてタワーを見上げていると、後ろからネックレスを付けてくれた。漫画のようなスマートさはなく、結局うまく付けられなくて自分で留めたのだが、友人には「少女漫画のようだった」と自慢した。
でも、自慢気に話していたそのネックレスを、友人の中の1人が「高校生の時に同じブランドのやつペアで買ってた」と言われ、そのネックレスを身につけることはなくなった。

私の中に住む「魔物」が、クリスマスになると顔を覗かせてくる

その後彼とも別れ、就職活動などの多忙な時期を経て、大学4年生になっていた。大学4年生になると随分と大人びて見えた過去の恋人たちも、ただの学生で、何を高望みしていたんだろうと反省するようになった。
そして社会人になってから付き合った彼とは、プレゼントは欲しいものを互いに言い合うという、サプライズによるトキメキのない行為を選択したが、今までのプレゼントに文句を言いまくっていた私にとっては、これが最適だった。

働き始めると、クリスマスの日でも仕事があり、友人の投稿も一気に減っていった。年末は多忙な時期だなと、クリスマスそっちのけで仕事のことばかり考える自分がいたくらいだ。

今思えば、たかが年に一度のイベントに、ましてや本来キリスト教徒のお祝いの日であるのに、何故あそこまで躍起になっていたのか、自分でも不思議でしょうがない。友達も自慢してくるような子ばかりではなく、むしろ私から率先して話題に上げていた。何がそこまで私を奮い立たせていたのだろう。
クリスマスが近づいてくると、いつも過去の恋人たちの優しさを無碍にしたことが申し訳なく感じる。

クリスマスは街全体が輝きだす、特別な日。楽しい思い出もたくさんある。もう大人なのだから、誰が何をどこで過ごしていようと関係ない。
頭では分かっていても、私の中に住む魔物が、クリスマスソングを聞くたびに顔を覗かせる。

今年はどんな投稿をしようかな。