今回、このエッセイ募集の広告を見て、封印していた5年前の元カレとの別れの記憶が掘り起こされた。その当時は辛くて辛くて記憶に蓋をするという行動でコーピングをしていた。
しかし、時は流れ、私には新しい恋人ができ、今は幸せな生活を送っている。幸せな今だからこそ元カレとの過去と向き合って、高校生だった5年前の自分を労ってやりたいと思う。そして、元カレとの記憶を賞金5万円と引き換えてやろうと意気込みながら、筆を進めようと思う。
「可愛いね」と言ってくれた彼から突然告げられた別れの言葉。
高校2年の時の1月1日。
私は1年半付き合った彼氏と別れた。その人は178cmの高身長で坂口健太郎似(と当時は思っていたが今振り返ると恋は盲目ってやつ)。
当時の私はその人のことがタイプだった。彼との付き合いは順調で、別れる1週間前にはクリスマスのデートもして、プレゼントを交換しあった。彼はいつも通り私に「好きだよ」「可愛いね」などの甘い言葉を囁き、私もそれに対していつも通り甘い言葉を返した。
しつこいくらいにこの言葉を使っているが、クリスマスという気分の高揚を除けば本当にいつも通りのデートであり、まさかこの1週間後に別れを告げられるなんて思いもしなかった。
そして2017年1月1日にこんなLINEが来る。
「俺は〇〇(私)のことが好きか分からなくなった。」
振られた理由を彼に聞くと、既に彼の心には私がいないことに気づいてしまった
先週まで彼とイチャイチャラブラブしていたため、突然のその言葉に頭が追いつかなかった。混乱しながらもその言葉の訳を聞いた。
「1個下の後輩に告白されたんよね。彼女がいるからダメだとは思ったんだけど、〇〇よりその子の方が好きだと思った。今もその子とLINEしていて、その子のことが好きだなって思う。実はクリスマスに〇〇とデートする前の日に2人で遊びにも行った。」
気が遠くなった。もう彼の心は私にないようなものだと思った。1週間前のデートの時には彼はもう後輩に気持ちがあって、私は彼の口先だけの言葉にときめきを感じていたのだ。
私はもう彼氏の心を取り戻そうと頑張ろうともしなかった。了解の意だけ伝えて、それからはほとんど連絡を取っていない。
弱さを見せないようにしていると彼は友人に「そういうところが可愛くない」と言った
私は彼のことが大好きだった。大好きだったからこそ裏切られたという気持ちが強かった。泣いて泣いて泣いて、1週間後の登校日の時には1月1日より5キロ痩せていた。学校で無意識に彼の姿を探し、ひっそりと涙ぐむ自分がいた。
私は昔から人に弱い部分を見せたくないと考える人間だ。だからこの記憶に蓋をし、何ともないように振る舞った。人に弱さを見せないため、一般的に見れば私は強い女の部類に入ると思う。
元カレが「〇〇は俺と別れても冷静で俺に別れないでってすがりつくことさえしなかった。こういうところが可愛くない」と言っていたことを仲の良い友達から聞いた。
私の弱みは人に弱みを見せられないということであり、それを高校生の彼が理解するのには難しかったのではないかと今になって思う。そして私も弱みを出すことができない子供だったのだ。
元カレとの別れが今の彼氏との幸せな生活を手に入れるキッカケになった
大学生になって、私は2つ年上の新しい恋人ができた。元カレとの別れを話し、自分が弱みを見せることが苦手なことも全て彼に話した。
彼はそんな私を受け入れ、今の私が好きなのだから無理に変わる必要はないよと話してくれた。彼には変なプライドはいらない。ありのままの自分でいられるような気がする。
この文章を書くにあたって、ずっと蓋をしてきた5年前の記憶を解放した。振り返ってみると元カレとの別れが、今の彼氏との幸せな生活を引き起こしてくれたんだなと感じる。
冒頭で、元カレの記憶を賞金に引き換えてやろうと思っていたが、この記憶を無理に消す必要はない。だってその時の経験が今の生活に活かされているはずだから。