人生のシナリオが狂い始めたのは、2020年3月、私が26歳の頃だった。
結婚も同棲も私の妄想で…。実家暮らしから抜け出す術を失った
3年間の遠距離恋愛をしていた彼氏が関東に帰ってくるタイミングで、彼氏と婚約の上、私は埼玉の実家を出て幸せな同棲生活のスタートを切るものだと、心底思い込んでいた。
その思い込みは、根拠のない妄想だったのだと、あっさり否定されることになる。
彼氏は私への相談もなく神奈川の職場近くの寮へ入居。異動と引越しで頭がいっぱいで、婚約も同棲も考える隙がなかったらしい。
追い討ちをかけるように、同時期に新型コロナウイルスが蔓延。
私が勤める東京の会社は、ありがたいことにフルリモートで働くことができた。
しかし、実家を出たかった私からすると、「通勤が遠くてしんどいから実家を出て一人暮らしをする」というカードが切れなくなってしまったのである。
結果、私は実家暮らしから抜け出す術を完全に失ってしまった。
はじめのうちは、「社会人になった時に実家を出ていれば……」なんてタラレバを並べてメソメソしたりイライラしたり、不動産検索サイトを眺めてはやめ、を繰り返した。
心に募る実家を出ることへの憧れについて、何度も考えた。ただ、何度考えても、結局、コロナ禍で実家を出るメリットは、実家に残るメリットを上回らなかった。
現状を受け入れて楽しむ境地に至った私は、「実家最高」と言いたい
彼氏との関係は現在も続いている。まだ婚約の気配はない。
当時、同棲できなかったことへの不満から発展した別れる別れないの論争を乗り超えた後、私は結婚へ必要以上に焦るのをやめて、彼を信じ、彼のタイミングも配慮して愛し抜く方向へ切り替えた。
もちろん、30歳までに結婚したいし、子どもが欲しいために、リミットも意識はしている。ただ、当時の自分は自分の夢を一度に叶えたいだけの、独りよがりな発想で物事を考えていたと、その点は深く反省している。
最終的に、私は現状を受け入れて楽しむ境地に至っている。
今、声を大にして言いたいのは、「実家最高」ということ。
話し相手がいるから寂しくないし、何より経済的だ。料理をすれば食べてくれる家族がいて、家事も家族で分担することで軽い負荷で快適に暮らすことができる。
そして、少しずつ年老いていく両親と、同じ屋根の下で共に過ごせる日々は、私にとってこの上なく貴重な時間だ。
いつもは、いつまでも、ではない。
軽率に「実家暮らし」を咎めるような発言はやめるべきだと思う
こういう人間もいるわけなので、飲み会などで「え~!○○ちゃん、実家暮らしなんだ~」だったり、「絶対若いうちに一人暮らしは経験した方が良いよ~」といった軽率な発言は皆様謹んでいただきたい。
私のように実家を出たくても出られない人はいるし、私よりもっと複雑な理由で実家にいる人も、中にはいるはずだから。
私の場合、生活が自立し切れていない背徳感や恥ずかしさを、必死に奥に押し込めた結果の実家暮らしだったりもする。
今夜も私は、家族みんなでテレビドラマを見ながら談笑し、母が作ったごはんに舌鼓を打つのだろう。
その時に、こっそり母へ、「いつもお米はどこで買ってるの?」と聞いてみようかなと思っている。