社会人になり、全国に転勤地がある企業に就職したことをきっかけに、私の一人暮らしの生活がはじまった。それから約4年半。今は地元で仕事をしている。

「実家から通っているんでしょ」と当然のように言われるが、いや、違う。実家から通える距離であり、私は住宅手当もないものの、一人で今も暮らしている。
友達にも「偉いねー」とか「実家通いなら、貯金もできるのにね」などと言われる。私も、正直、今のお給料で、家賃を払って暮らせるほど十分にお金がある、ということではない。
実家暮らしだったら、当然貯金できるはずのお金を削ってまで、一人暮らしを選んだ。

一人っ子で過保護の両親の元で育った私の、はじめての一人暮らし

社会人になるまで、実家から大学に通った。
私は一人っ子で、両親はかなり過保護。それこそ、旅行以外の外泊は禁止で、大学生の醍醐味というか、一度は経験するであろう、飲み会からのカラオケオール!もしたことはない。
大学ではサークルにも所属していたし、どちらかというと、大学生活はエンジョイしていた方だったと、自分では思っている。飲み会もたくさんあったし、付き合い程度に参加はするようにしていた。

1次会、2次会が終わり……当然のように、さっと帰る。帰る前には、母に帰るよLINEをする。
帰宅する時間が、日付を越えてしまうことはよくあったが、しっかり真面目に帰宅。ただ、私は正直なところ、飲み会といった大勢の集まりがあまり得意ではない。というか、厳格な家庭で育ったせいか、羽目を外したりすることはまずないし、夜遊びをしたりするのが苦手なのだ。ただ、カラオケオールは、ちょっぴり憧れでもあった。

大学を卒業し、厳しい家庭に育った私のはじめての一人暮らしがスタートした。
遠方に暮らす娘が心配らしく、家に帰りました、の報告LINEは必須。実家暮らしの時は、洗濯機もまわしたこともなく、家事をしたとしても食器洗いくらい。だけど、家族から離れる一人の心細さはあっという間になくなって、一人暮らしで手に入れた自由が有り難く思えた。
もちろん、一人暮らしになってからもオールをすることはなかったが、初めて彼氏もできた。

地元に就職も選んだのは一人暮らし。心の支えの時間を守りたかった

将来のことを考えたとき、やはり結婚は地元でしたい、少なくとも実家に可能な限りで帰りやすい場所でパートナーと暮らしたい、と思った。そういった経緯もあり、地元での勤務を希望するために、職種のランクを下げ、地元に戻ることを決意した。
勤務地は、実家からも30分程度で通える職場だ。ただ、今まで得ていた住宅補助もない。けれど、実家からではなく、一人暮らしを選んだ。

実家に帰ると、なぜだろう。家族なのに、窮屈に感じることが多い。
私は幼い頃から、なぜか自分の部屋で過ごす、という習慣がなかった。受験勉強も、リビングでしていた。見たいドラマも両親と一緒に見るのが気まずいから、夜、両親が自分の部屋に戻って、静かになってから見た。
もちろん、家族のことは大好きだし、一人っ子だからこそ、愛をまっすぐに受けた。そんな愛を与えてくれた両親には感謝している。たまに実家に帰った際に、母親のつくってくれたご飯を家族3人で囲んで食べるのも、嬉しい。だけど、何かにつけ監視されている気がして窮屈なのだ。
家で、好きなお菓子を食べながらドラマを見る時間、そういう時間を実家で過ごすことはできないと思う。自分の心の支えになる時間が実家暮らしだと失われてしまう、そう思ったのだ。

一人暮らしだから守れる自分の時間。私には一人の時間が必要だ

実家暮らしだったら、貯金できたはずのお金を削っても、私は一人での暮らしを選んだ。
友人や職場の人には、実家から通えるのに一人暮らしするの?と言われる度に、心にチクッと刺さる。
いいじゃないか、私には一人での時間が必要なのだから、と心の中で言い返してみる。こんな一人よがりだから、いつも一人なのかな、と思うこともある。

だけど、一人暮らしだからこそ、こうして言葉を綴ることも、好きな言葉を読むこともできる。それでも、今は、どこかで殻をやぶって、誰かと暮らす未来も考えたい、考えなきゃと思う。
自分との対話の時間、必要不可欠な時間を窮屈な感情がなく、共有できる誰かと出会うまで、私のこの生活は続いていく。