サンタさんの正体は母。優しい嘘は人に尽くし、与える心をくれた

小さい頃から信じ込みやすい性格で、サンタさんは絶対にいると信じて疑わなかった。親の仕事でシンガポールに住んでいた時は、日本語が通じないかもしれないと恐れ、英語でサンタさんに手紙を書いたほどだ。
私は“Dear Santa, I believe in you.(サンタさんへ、私はあなたを信じています)”と熱心に言葉で綴った。
小学6年生のときには中世ヨーロッパっぽいドレスがほしいと手紙に書いた。
若草物語の表紙に描かれた4姉妹の姿を見て、床すれすれまである長い丈と広がった裾のドレスに憧れを抱いていたからだ。
本当はズボンの方が似合うけれど、サンタさんにならメルヘンが好きな気持ちを分かってもらえるかもしれないと期待し、サンタさんに想いを綴った。
しかし、クリスマスに届いたのは濃い茶色のコートと新しい下着だった……。
プレゼントに落胆していた私と異なり、「いいじゃない」と喜んでいる母を見て、初めて違和感を感じた。
このコートは私ではなく、母が好きなコートであり、この下着はきっと通販で安く手に入れたのでは?という疑惑が脳裏をよぎった。さらにその晩、サンタさんから貰った手紙と同じレターセットを大量に発見し、ついに疑いが確信に変わった。
サンタさんは母だった!なんてこった!
サンタさんに送った数々の手紙はすべて母が読んでいたと考えると、顔から火が出る程恥ずかしかった。
「サンタさんはママだったんだね」と伝えると、母は小さいころにサンタさんにプレゼントを貰ったことがなかったから、子供にはサンタの存在を信じてほしかったという。
母は私のために10年程、ずっと優しい嘘をついてくれていたんだなと思うと自分がどれほど幸せ者なのか思い知らされた。
3年後、親の仕事で今度は上海に住んでいた私は初めてサンタとなって、上海や雲南省の農民学校に赤い靴下をプレゼントした。
中身は1ダースの鉛筆、ノートなど学校生活で使えそうなものがこまごまと詰められている。学校のGiving Treeという取り組みで毎年衣類や学校に必要なものを貧しい子供たちにクリスマスプレゼントとして届けているのだ。
おそらくシェル・シルヴァスタインの “The Giving Tree(大きな木)”というリンゴの木が男の子に無償の愛を捧げる物語が由来だと思われる。
なんでもあげれば良いわけではなく、電池を使用するおもちゃなど、電池を買わなければ使用できないプレゼントは禁止、一度でも使用済みのものは禁止など厳密なルールに基づいてプレゼントが用意された。
プレゼントをあげるかどうかは任意だったが、私は喜んでサンタとして、わくわくしながらプレゼントを用意した。拙い中国語でハッピークリスマスとお祝いの言葉を書いた手紙も添えた。
貰う方も嬉しいけれども、贈る方も同じぐらい嬉しい気持ちになるなんて、サンタになって初めて知った。サンタからの、母からのプレゼントを通して、私は人に尽くし、与えることの大切さをいつの間にか学んでいたようだった。
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