生まれてごめんと言ってごめん(朝日新聞「ひととき」佳作)

遺書はなんでも素直に書ける。読んだ後の反応を見ることがなければ、感想を聞くこともないから。
病気を患い、金銭的にも精神的にも両親に負担をかけた。「いっそのこと見放してくれ」と思うのに、両親は老いゆく体にむちを打って働き、家では弱った娘に優しい言葉をかける。
私がいなければ、もっと楽な生活ができたはず。趣味を楽しんだり、家でもう少しゆっくりしたり。そう考えると、死ぬことが怖くなくなった。
だが、死にきれなかった。そこから1年半、違う世界に飛び込み、生活環境が変わった。たくさんの人に出会い、違う視点から物事をとらえることができるようになった。
「息を吸って吐いてくれるだけで十分」。母の言葉もなんとなく理解できるようになってきた。
もう読まれてしまったであろう遺書に書いた、「生まれてきてごめんね」。その一文にどれだけ両親は心を痛めただろうか。
「何を今さら」とか、「急にどうしたの」と言われそうで、直接は言えないけれど、心が穏やかになった今、「生まれてきてごめんねなんて、言ってごめんね」、そう伝えたい。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
恋愛やキャリアなど個人的な経験と、Metooやジェンダーなどの社会的関心が混ざり合ったエッセイやコラム、インタビューを配信しています。