神社で巫女をしていたとき、わりとディープなことが書かれていた絵馬
神社で巫女をしていた際、絵馬をたまに見ていた時だった。
「**ちゃんの避妊手術がうまくいきますよに!!」
一瞬、ぎょっとした。よく見たらペットのワンちゃんのことだった。
伏せてはいるが、名前がちょっと人間チックだったので、何事かと思ってしまった。
たしかにうちの神社、健康もペットも両方お守りあるけど。
右端には、西日本のさる地方の住所が書かれている。遠方からの来訪者だった。
これ、近所の神社で書けるかな。
単純にそう思ってしまった。
神社の絵馬には、わりとディープなことが書いてある。
さる学問の神様が強い神社には、志望校がずらりと書いてある。
模試の最初に書く志望校判定じゃないんだぞ。とツッコミを入れたくなる。
さる縁結びの神様が強い神社には、ハート型の絵馬の左右にカップルの名前と共に、それぞれの願いが書かれている。
大抵男は「ずっと一緒」とかの一言なのに、女は「結婚して、子供産んで、家庭を作って」等、非常に現実的である。
大丈夫かな。この時点で考え方に差があって別れそうとか言っちゃいけない気もするけど。
そして縁切り系は怖い。これいいの?昼間よ?と言わんばかりの話題も多い。
外国人観光客が書いたと思われる絵馬も、語学に堪能な人と行くと解説がつくのだが、
「これがねぇ、だいたい書いてあること一緒なんだけど、金も欲しい結婚したい子供欲しい全部盛ってきてるわ」
とのことであった。
旅行は日常を置いてくる場所。「旅行地」としての神社の役目を考えた
パンチのある絵馬たちを見るたびに思う。
近所で友達や家族がこんな絵馬書いてるの、発見したくない。
観光、旅行で遠くの地に足をはこんだから、ハメを外す。
知り合いがこんなとこ見るわけないだろうよ。というリミッターが外れることで初めて書くことができるのではなかろうか。
「旅行に行くときは周りは普通のカップルとして見てもらえるから」
不倫旅行王道のセリフである。
「旅行に来たから、好きなものを食べる」
「旅行に来たから、酒をたくさん飲む」
旅行に来た際、私たちは普段の気遣いだったり、健康のための節制だったり、生活だったりの日常を置いてくる。
だからこそ、他人の目を気にせずにあんな絵馬が書けてしまうのだと思う。
よく「観光客のマナーが悪い!」は度々問題になるが、旅行の中ではきっと自分であって自分でない、日常を置いてきた人たちで、きっと日常では小心者で、生きている人たちなのかなと思う。
野望を放って、素直になれるのも、旅の楽しみなのかもしれない
大学生の時、一人で箱根に行った。
周りは就活を始める時期で、説明会等に行っていた。私は進学か就職かで悩んでいた。
周りは圧倒的に就活の中、本当に悩んでいた。
その時、小さな神社で周りに誰もいないから、「進学したい!ここで終わるのやだ!進学したい!」と初めて野望を口にできた。
近所だったら。近くに誰かいたら。知っている人がいたら当時の私では言えなかった気もする。
ハメを外しての言葉だったかもしれないが、素直な気持ちが出た。
旅行は、その人の欲も解き放つが、同時に素直になれる時間だ。
私は悩んだら遠くの神社の前に立って、自分が何をお願いするか。何を言い放つかを結構大切にしている。
私にとって、旅行は欲の整理整頓、己の気持ちと素直に向き合う大切な時間だと思う。