似たような気分転換の方法を探していると、意外な場所に答えが
旅行というと旅先ではもちろん、準備中や出発前もワクワクするものである。特に空港や駅のホーム、バス停。これから出発するんだという期待と実感が湧いてくる。
私にとって旅とは気分転換であり、慌ただしい日常から離れて非日常へと向かう逃避行である。
コロナ禍でなかなか旅行もできなくなり、私はこのワクワク感が恋しくなった。別の場所でどうにか似たような気分転換をする方法はないかと思っていると、意外な場所に答えを見出した。それは、図書館である。
「街を旅しているみたいで面白いな」と感じて、思いついた
私は読書が好きなので、よく図書館へも足を運ぶ。海外の滞在先でも、現地の本屋や図書館に立ち寄ることもある。このコロナ禍で人の多い場所へ出かけることに気が進まなかった私は、家で本を読むことが増えた。ある海外文学を読んでいたときに、ふと「この本に出てくる街を旅しているみたいで面白いな」と感じた。
そこから私は“読書旅”を思いついた。
本の中に描かれた世界を旅する。文字に表された風景を頭の中で想像し、時にはインターネットで写真や地図を見てみる。そうすることで物語の解像度も上がるし。よりその本の世界に没入できるのである。家にいながら、こことは違うどこかへと空想世界へ旅に出る。
「時空も国境も超えた、世界中の本が一堂に会する場所」と考えると
1冊の本を読み終えた私は、次は何を読もうかと考えた。家にあるのは一度読んだことがあるものばかり。かといって取り立てて欲しい本がなかったので、ひとまず図書館へ行ってみることにした。
私は引っ越しをするたびに、スーパーなど生活必需品を揃えるところに加えて、必ず最寄りの図書館はチェックしている。コロナ禍で閉館している期間もあったが、調べるとどうやら再開したらしいとわかり、早速出かけてみることにした。ここで“読書旅”からさらに発展した“図書館旅”の可能性を見出すことになる。
図書館とは、様々な本が集まる場所である。ただ、単純に本がたくさんあるだけと思うと面白みがない。だが、「時空も国境も超えた、世界中の本が一堂に会する場所」と考えるとどうだろう。数多の蔵書に記されているのは民族に伝えられてきた神話や民話、世界に刻まれてきた歴史、何世紀も前の人々が編んだ物語、そして宇宙や未来といった移動手段の確立されていない世界の話。
何か面白そうな本はないかと本棚の間を縫うように歩いていると、まるで旅の目的地を決め計画を立てているときと同じような気持ちになる。目についた本を手に取って開いてみるときには、まるで空港や駅やバス停で出発直前に感じたあのワクワク感に似たものが湧き上がってくる。
すると、図書館の館内図は世界地図のようであり、貸出カウンターはチケットカウンターのように思えてこないだろうか。
過去や未来、現実には存在しない世界にも旅ができる図書館旅
実際にその場所へ行き、空気を吸い込み、実物に触れるという体験には劣ってしまうかもしれない。しかし、図書館旅でも旅行気分は味わうことができる。それでいて過去や未来、今は廃れてしまった場所、現実には存在しない世界にも旅ができる。
おうちにいながら“読書旅”、一歩出てみて“図書館旅”。新しい読書の楽しみ方であり新しい旅のかたちとして、私はぜひともおすすめしたい。