大学生になってから一人暮らしを始めた。
一人暮らしに胸を躍らせていた。

期待していた一人暮らしとは、かけ離れていた。生活するということを勘違いしていた。
何もしなくてもご飯が出てくる、服が綺麗な状態、温かいお風呂に入れる。それが当たり前だった実家。
「生活するってこんな感じなのか」と思いなら自分で作ったご飯を食べる。
「実家の料理って何であんなに美味しいんだろう」
同じ味を作りたくても作り方がわからない。
18年間一緒に暮らしてきていたのに知らないことばかりだ。

大学卒業後、社会人になり全てを自分でするようになった。
家賃、光熱費、食費、携帯代。生活するのにこんなにお金ってかかるんだ。これが本当に生活するってことか。そう思った。
働き始めて5ヶ月。
心が壊れた。
うつ病になった。
限界だった。
身体も心もボロボロで、生きる意味が分からなかった。

そんな状態で実家に帰った。
帰っただけ。何もしてなくても帰った瞬間から心が安らいだ。
家族の顔が見えた瞬間、涙が溢れ出した。
全ての感情が入り交じった涙だった。
初めて感情をコントロール出来なくなった。

生活するって、ただ生きるだけじゃないんだ。
初めて“生活”の意味がわかった。