清水寺で今年を象徴する漢字が発表されたというニュースを見て、また“金”か、と思う。
オリンピックが開催される年の漢字は“金”になることが多いらしいと、どこかで聞いたことがある。ふと自分にとっての今年の漢字は何だろうかと考える。

8カ月もの休職期間は、価値観や考え方に大きく変化をもたらした

今年の漢字は間違いなく“変”だ。
2021年はとにかく変化の多い年でした。誰も尋ねてはいないのに脳内で私は一人語りだす。

私の2021年は突然、職場に退職を申し出るところから始まった。1月某日朝、布団から出られなくなった私は上司に電話をして、辞めますと伝えた。
上司はさぞ驚いたことだろう。正直自分が一番驚いていた。なんとなく自分が限界を感じていたことには気づいていたけれど、新年早々辞めてやろうなんて思ってもいなかった。それはあまりにも無責任に思えた。
上司は私に病院に行くよう勧めてくれ、そこで私はうつ病と診断された。その後約8カ月の休職を経て退職を決めることになる。

この一連の出来事は間違いなく、人生の転機と呼べるものだと思う。特にこの8カ月もの休職期間は私の価値観や考え方に大きく変化をもたらした。
休職し始めた頃の私は毎日ベッドに横たわり、どうして自分は他の同期のように働き続けることができないのだろう、仕事もせずに何をしているのだろう、そんな風に自分を責めることに時間と労力を費やしていた。思えばそれが私の唯一知っている物事の乗り切り方だったのだと思う。自分の無力さをかみしめて原動力にして、進んでいく。

自分に合わないという理由だけで、職を手放すことは難しかった

しかし、そういった考えも次第に変わっていった。
何事もほどほどでいいじゃないか、もっと自分の思うままに生きていいんじゃないかと思うようになった。そう思うようになってからは、25年間そういった考えにならなかったのが不思議に感じるほどだった。
知らず知らずのうちにこの競争社会でどのようにして勝ち進んで行くか、その方法ばかりを考えるように育てられたことに気づく。そうしてようやく、仕事もせずただ休んでいるありのままの自分を受け入れることができたのだった。

自分の価値観が変化すると、仕事をしているときの自分は全く幸せでなかったことを認めることができた。そして退職を決意した。
前の仕事は自分がやりたいと志望した職業だったけれど、それを得たからといって幸せになれるというわけではなかった。自分の抱えられる量以上のストレスを受けて日々過ごしていたのだから当然だけれど、うつ病と診断される前は、ただ自分に合わないという理由だけでその職を手放すことは容易にはできなかった。
一種の執着かもしれない。自分の生きる道はここにしかないと本気で思ってしまうほど狭く、暗いトンネルを一人で歩いていたのだ。

初めての仕事を辞めてみれば不思議と、新しい道を探し始めた

社会人になって初めての仕事を手放すのは怖かったけれど、辞めてみれば不思議と新しい道を探し始める。短時間の仕事を得て、自分が今後何をしたいのか、どんな人生を歩んでいきたいのか考える日々。
自己分析をすることで自分の知らなかった一面に気づかされることは多い。自分の大事にしている価値観や生き方を自分自身が受け止め、それを実現していくことが幸せにつながっていくと思う。
2022年もきっと変化の多い年になるだろう。来年の漢字はなんだろう。そんなことをもう考えている。