16歳、高校1年生の冬。
クリスマスの思い出といえば、私は部活の子の紹介で他校の男の子と人生初めてのデートをした、あの出来事だろうか。

友達の紹介で知り合った男の子とのクリスマスデートは楽しかった

当時私の周りの子たちはSNSを通して恋人を作るというのが主流。
彼氏が友達の友達の友達だった、なんて事はよくあることで、田舎のネットワークは狭すぎず広すぎず、多感な刺激が欲しいあの頃の私たちにはちょうどよかった。
そんな中で友達の紹介というのはちょっぴり……いや、かなり古風だったと思う。

恋人がいる友達はやはりキラキラと輝いて大人びて見えたし、私には無理だと思った。
友達が紹介してくれた男の子は同い年の他校の子で、友達を通してLINEを交換して会うまでは毎日LINEでやり取りした。

さて、いざ会うとなるとなかなか難しい。
お互いにアルバイトや部活で忙しかった。結局初めて会ったのは25日のクリスマスだった。
心臓が飛び出るほど緊張した。この日のために初めてドンキでカラコンを買った。

親には友達と遊ぶと言ってショッピングモールまで送ってもらった。
洋服はお金がなかったので、アベイルで全身を揃えた。
ピンクのふわふわのセーターに、白いミニスカート。今の私なら絶対にしないコーデだ。

男の子は、性格のいい子だった。気さくだし、人見知りしてしまう私とは対照的にゲームセンターに行こうと誘導してくれて、いくつかクレーンゲームをして遊び、プリクラを撮った。
フードコートの一角で2時間ほどしゃべってその日は解散した。
楽しかったし、ドキドキした。

押し寄せる罪悪感。見知らぬ男の事過ごしたことで汚された気持ちに

しかし、その後に親の車で家まで帰るときに罪悪感が押し寄せてきた。

親に嘘をついた事。
親しい友達に一連を話していない事。
初めて会った子と手を繋いだ事。

とても悪いことをしてしまったという思いが、楽しかった思い出を塗り替えてゆくように押し寄せてきたのだ。
当時の私にはクリスマスは家族としか過ごした事がなかった。
見知らぬ男の子と数時間過ごしただけで汚されたクリスマスになってしまったようにさえ感じた。

複雑なクリスマスを終え新学期。
久しぶりに会った友達から「クリスマスに他校の男子といたでしょー」とからかわれてしまった。
やはり田舎のネートワークは狭い。
さらにあろうことか、その男の子は私の事をいたく気に入り、LINEでまた会おうと誘ってきた。
私は忙しくなったとよくわからない返信をして連絡を絶った。

大人になりきれなかった16歳のクリスマスを葬ることができた今

結局恋人ごっこ遊びをして終わった。
大人になりきれなかった16歳クリスマス。
人にはそれぞれタイミングがあるのだろう。
そう悟ってから数年は家族と穏やかにクリスマスを過ごした。
社会人になってからも、恋人はいたりいなかったりで、いてもクリスマスの時期には別れていることが多く一人で過ごしていた。
ここ数年は気の許せる恋人と穏やかにクリスマスを過ごせている。

あぁ私はこの時を、あの16のクリスマスからずっとずっと待っていたのだ。

この瞬間を待ち望んでいたのかのように、ストンと胸の詰まりが取れたような気がした。
そして今、ようやく16のクリスマスを葬ることができたのだ。