クリスマスに何か虚しさを感じてしまうのは私だけだろうか。
寒さのせいなのか、年末が近づいているせいなのか、どうしても寂しさや切なさに不意に涙が出てきてしまうことさえある。
なぜか共感する彼らの歌を聴くと、気持ちが過去に引き戻される
いつも私の中で流れるクリスマスソングは、街中に流れるそれとは違うバラードばかりだ。
B’zの「いつかのメリークリスマス」と桑田佳祐の「白い恋人達」はこの時期になると必ず、私のヘビロテの中に組み込まれる。
悲しげな歌声のバックで聞こえる鈴の音。
歌詞は、過去の恋人と過ごした楽しい日々の思い出。
この楽しい曲が溢れている街で、なぜか共感してしまう彼らの歌を聴き、気持ちが過去に引き戻される。
3年前のクリスマス。
私は、当時の恋人と街を歩いていた。寒い夜に手を繋いで彼と街でデートをしていた。
今思えば、クズのような彼氏だった。
いつでも金欠で、趣味のスケボーに没頭して、学生の身分でありながらろくに勉強もバイトもしていなかった。
もちろんクリスマスプレゼントという概念がない。
誕生日もホワイトデーのお返しさえもないので、当たり前だ。
なんでも許せた。一緒に過ごすことができるだけで、幸せだった
しかし、そんな彼に慣れていたし、周りの評価も考えずに趣味に没頭している彼が大好きだった。たぶん普通の大学生が代名詞の自分と真逆の性格の彼に、憧れすら感じていたのかもしれない。
なんでも許すことができた。
クリスマスに一緒に過ごすことができるだけで、幸せだったのだ。
お金のない彼とのデートはいつもカラオケ。
そして、クリスマス当日ももちろんそうだった。
クリスマスソングを歌う彼にクリスマスプレゼントはこれでいいとさえ思っていた。歌がうまい彼にまたキュンとしてしまっていたのだ。
カラオケを出ると、すっかり夜になっていた。
お互い実家暮らしの身で、外泊の予定のなかった私たちはコンビニでホットコーヒーを買い、川沿いを歩いた。
そして、座って話そうと言われ、川辺に腰を下ろした。
寒くて、寒くて仕方がなかったが、彼が抱きしめてくれたのと、ホットコーヒーの温かさでまた、心があったかくなった。
「ほんとずるいなぁ」と、思った。
こんな優しさだけで、お金がなくて、どこにも連れてってもらえないところも、普段連絡が全然取れないことだって許せてしまうのだから、罪な男だ。
クリスマスプレゼントを用意してくれていた彼。涙がでた
たわいのない話を寒空の下、話していると、「はい」とちいさな箱を渡された。
「そんな大したもんじゃないけど。クリスマスプレゼント」
「え……」
びっくりした。彼は、クリスマスプレゼントを用意してくれていたのだ。
ハートのネックレスだった。
いつもいつも、お金がないと言われていたので、全く期待していなかったが、ちゃんと用意してくれていたのだ。
驚きと嬉しさで涙がでた。
お金がなくても、たとえ一緒に過ごす時間が少なくても彼が私を思う気持ちに改めて気づき、いっそう彼を思う気持ちが強くなった。
寒くなると、思い出すこの思い出は私の中で、キラキラして残っている。
そして、幸せだったあの日々を思い出し、今年もクリスマスを迎える。