クリスマスの思い出。小さい頃、クリスマスが大好きだった。
聖なる夜にごちそうを食べて、その次の朝にはプレゼントが置いてある。クリスマスの1ヵ月前から街にはイルミネーションやツリーが飾られ、澄んだ空気に日の沈みが早い冬の夜を彩る宝石のような光は、毎年の楽しみだった。
お祭りとはまた違った独特の雰囲気は、今でも私に行事の大切さをしみじみと感じさせてくれる。
クリスマスの朝は、兄弟3人でもらったプレゼントを見せ合うのが習慣
小学3年生を終えるまで、私たち家族は祖父母と一緒に住んでいた。もともと一軒家に住んでいた祖父母のところへ引っ越してきたので、自分たちの過ごす2階の部屋は家族5人には狭かった。
寝るときは川の字になって寝ていた。クリスマス当日はどの年も兄が一番に起きて私と弟を起こした。各々プレゼントを開けて一通り楽しんだ後、兄弟に自分のもらったプレゼントを見せ合い、満足した頃また眠りにつく。それがクリスマスの習慣だった。
どの年も絶対に兄が最初に目覚める。兄と歳が8つも違う弟も赤ちゃんだったのに静かにプレゼントを開けて自分のプレゼントで遊んでいた。兄弟3人で楽しむクリスマスの朝は、本当に楽しい時間だった。
父が転職しサンタ終了通告を受けた年、兄は弟のためにサンタになった
成長して中学2年生になると世界はリーマンショックに陥り、その理由とは別に、たまたま身体を壊した父は仕事を辞め、違う業界の仕事に就職した。
その年は家にクリスマスプレゼントを買う余裕がなかったため、母から「〇〇地区(私たちが住む町名)のサンタは不況の荒波にのまれて死にました」とユーモア溢れる通告を受けた。少々ショックだったが、それを上回る面白い言い回しに、爆笑したのを覚えている。
しかし、歳の離れている弟はまだ小学校低学年だった。幼いのにプレゼントのないクリスマスは可哀想だなと心が痛かったが、その年から何も言わずに兄がサンタになってくれた。プレゼントをあげた後も彼は黙秘を貫いたため、本当にサンタのようだった。ネタバレはその数年後だったが、その数年間はミステリアスで愛の溢れたクリスマスだった。
ミシンを走らせ、クリスマスを振り返ると、心がじーんと温まる
ここ数年は旦那とクリスマスを過ごしている。
それまではバイトをしたり、会社に出勤したりと、大人の階段を上っていくにつれクリスマスはただの平日に化していたが、彼と過ごすようになってからは幼少期とは違った素敵なクリスマスを過ごしている。
私が日常の中でほしいと言ったものを覚えていてくれ、それをプレゼントしてくれる。私はその優しさと愛情にいつも涙する。
今年は「人は大人になってもプレゼントをもらうのは嬉しいこと」といろんな場面で感じたため、ささやかながら身の回りの人に趣味の洋裁で何かプレゼントをしたいなと、12月はミシンを走らせている。これが思いのほか楽しく、製作側の私もワクワクしている。
これまでのクリスマスを振り返ってみると、心がじーんと温まる。もちろん煌びやかな人たちと違って心むなしい、やるせないクリスマスもあった。現実を見ないように目をぎゅっと瞑り、布団を頭までかぶってただただ眠った苦くて報われない思い出もある。
人生何があるかわからないが、とりあえず今年のクリスマスはミシンをかけながら、温かい気持ちで迎えられそうだ。