土地の香り、葉擦れの音…五感が研ぎ澄まされ、街を感じられる一人旅

最近は旅の仕方も変化しているけれど、わたしはやっぱり一人旅が好き。
飛行機から降りた途端に感じる、独特なにおい。
慣れない石畳を歩くときに、凹凸が足の裏に響く感覚。
角を曲がる度に、見えてくる思いもしなかった景色。
意味がわからないからこそ、聞こえてくると想像が膨らむ外国の言葉。
思わずにやけてしまうような、馴染みのない食材が使われた異国料理。
誰に気を遣うわけでもなく、思う気ままに感じることができるのが一人旅。
感性を研ぎ澄まして、その街を感じることができる。その感覚がたまらない。
5年前の夏、3週間かけて北欧の国々をめぐったときのこと。
一人で海外に行くのはまだ2回目で、怖くなかったといえば嘘になる。
それでも、今振り返ると一人で行ってよかったと心から思える。
旅の中盤、ノルウェーの田舎町を訪れた。
着いたのは雨が降った次の日。
青々しい草と湿っぽさが混ざった匂いが漂っていた。
日本の梅雨の雨上がりとは違う、さわやかな香りだった。
大都市と大都市の中間地点にある自然豊かな町で、冬にはスキー客でにぎわうそう。
夏の間は落ち着いていて、のんびりと時間を過ごすことができる。
町の中心にある湖もひっそりとしている。
風に吹かれて揺れる葉が、さざ波のように響いていた。
湖には、まるで鏡のように周りの山々が反射し輝いていた。
その自然はただただ美しく、ことばで表現することができない。
柔らかい草の上に座ってその景色を眺めていると、いつの間にか日が傾いていた。
こんなに自由に、そして穏やかに時間を過ごすことができるのは、一人旅ならではの体験だろう。
去年の秋、「暮らすように旅する」ために一人で京都を訪れた。
過去に京都にいったときには、お寺や神社を観ることが多く、どこか慌ただしい旅だったように思える。
でも今回は、じっくりこっくり京都の街を感じたかったので、シティガールになりきった。
日本人の誰もが好きな街には、カルチャーが溢れていた。
雨の朝、老舗のコーヒーショップで優雅に楽しむモーニングセット。
店内にはかすかにほかのお客さんの話し声が聞こえていた。
そのどこか荘厳な静けさの中に響く、スプーンとコーヒーカップが当たる高い音。
老舗の余裕を醸し出す淹れたてのコーヒーのディープな香り。
京都で名の通った独立系書店で、見たことのないタイトルの本を購入した。
それはまるで運命の出会いのようで、一目惚れする美しいデザインの表紙の本だった。
早く本を読みたいと焦る気持ちを抑えながら、訪れたのは以前雑誌で紹介されていたカフェ。台北にも店舗を構えるスペシャルティコーヒーロースター。
シングルオリジンのコーヒーと、台湾名物のパイナップルケーキをいただく。
それは都会的だけれど、なぜか懐かしい気持ちにさせてくれる爽やかな味わいだった。
お店の方とお話したり、常連客とのやりとりを眺めたり、一人でいるとその空間をじっくり観察できる。
忙しい毎日を生きていると、時折、五感を使って日常を楽しむことを忘れてしまう。
そんな私の感性を研ぎ澄まして、リセットしてくれるのが一人旅。
疲れてしまったときや、行き詰ったとき、もやもやした時に、わたしに必要ものは一人旅。
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