どうしてこの映画が嫌いなの?
どうしてもうあの人のことが好きじゃなくなっちゃったの?
嫌いな理由はいくらでも簡単に挙げられるけど、好きな理由を挙げるのは難しい。
だからこのテーマだと知った時、自分にぴったりだと思うとともに海外旅行が好きな理由を初めて真剣に考え、文章化している。
旅のトラブルを足してもお釣りがくるくらい、私は海外旅行が大好き
フランスでもスペインでもデモに巻き込まれた。
ルーブル美術館には入れなかった。
バルセロナ独立デモのおかげで、一夜を旅行客の不満で溢れ、スラムのようになった空港で明かした。
その後タクシーデモにもかちあたり、初めて訪れたバルセロナの街を歩いて観光した。
性的被害に遭ったこともある。
イタリアに行く途中の機内で、隣の席だったガタイのいい男に太腿をまさぐられた。
隣の席で眠っていた彼には言えなかった。
フランスでは、百貨店の前にあった小さなお店にひとりで入ってポーチを買った。
レジで会計が終わると恰幅のいい男に羽交い締めにされ、「kiss me」とキスを強要された。
キスしないと解放されない雰囲気だったので、髭面の顎にした。
その後で身体を求められたが、連絡先を書くことで難を逃れた。
どちらも日本で痴漢に遭った時とは比べものにならない恐怖だった。
でもそれら全部のマイナスを足してもお釣りがくるくらい、私は海外旅行が大好きだ。
愛してると言っても過言ではない。
新しもの好きにとって、海外旅行は「知らない」を味わえるフルコース
自分を見失っていわゆる「自分探しの旅」に出たことはないから、海外に行って新しい私を再発見した、みたいな体験はない。
だけど、こうして理由を探していたら、自分という人間が少し見えてくる。
私の性格は、来店したことがあり、絶対美味しいとわかっているカフェなら、入ったことのないカフェに、調べてでも行きたい。
そこで頼むメニューは季節限定や食べたことのない新メニューがいい。
それは美容院でも遊びに行く場所でもそうだ。
そんな私のような「新しいもの大好き人間」にとって、海外旅行はフルコースで「知らない」を味わえるのだ。
親友とフランスの地下鉄の乗り方がわからず困っていたら、助けてくれたフランス人男性。
2日間行動を共にした彼は、夜になる前に解散してくれた。
なんて紳士なのだろうとうっとりした彼の職業はバーテンダーだった。
日本人の彼女を持ったことのある彼は日本語がペラペラだった。
豪奢なベルサイユ宮殿やお洒落なシャンゼリゼ通りは歩くだけで楽しかったけれど、彼が案内してくれた名もない街や英語の通じないレストランは、ツアーやガイドブックの中のフランスしか知らなかった私たちだけでは辿り着くこともできない素敵な場所だった。
私にとって「世間」や「常識」から解放される、極上の贅沢
気取った言葉で表現するなら、感情が映像として残るのも魅力のひとつだ。
海外で撮った古城の写真や広場で撮った動画を見返すだけで、その時感じたこと、話したこと、悩んでいたこと、全部が鮮明に蘇る。
初めてその国に降り立ったときの匂いや、市場で触れた果物の手触りさえ思い出せる。
忘れたくないことを記憶に埋もれさせずに未来の自分に届けられるのだ。
また、日本で暮らしている時は家族に守られたり、会社という組織の中の一員だけれど、言葉や土地勘が完璧でない海外という場所でのアクシデントは、自分の総合力というか人間の資質みたいなものが試される気がする。
自分の本質を否が応でも見つめ直し、普段無意識のうちに縛られている自分の周りのほんの数人だけの「世間」や、どこかの誰かの発言の真似事でしかない「常識」といったものから解放され、生身の自分だけで考え、行動し発言する。
これは普段お金からも時間からもルールからも制限のある私のような一般人には、最高のご褒美であり、極上の贅沢だ。
海外に行くことは私にとって何からも自由になれる。
これからも時間やお金が許す限り、いろんな国を旅し、また新たな海外旅行の魅力を知っていくのだろう。
10年後、20年後、今よりずっと多くの国へ行き、たくさんのはじめてを経験し、味わったことのない感情を知り、自由な生身の私という人間に触れながら、もっとより深く海外旅行の魅力を語れる人間になっていたい。