本の裏表紙の言葉に、ハッとして涙が溢れた
私の心を大きく動かし、生きる指南書となった本がある。
原田マハの、『星がひとつほしいとの祈り』という短編集だ。
恋愛以外は人生絶好調の主人公、文香。コピーライターである彼女は、出張後に寄った温泉宿で、ある盲目の老女と出会う。元令嬢であった老女は、自らの人生を語る。老女が教えてくれたことは、人にはそれぞれ星があるということ。恋であったり愛であったり。幸せ、平和。仕事の成功や言葉。その人にとって何より美しく、決して朽ちることのないものであるということ。
この本と出会ったのは一昨年の秋だ。星がきれいな夜に読了したのでよく覚えている。読了後、ぱたんと本を閉じ、裏表紙に目をやった。
「時代がどんなに困難でもあなたという星は輝き続ける」
裏表紙のこの一文に私の心は稲妻に打たれた。ハッとして涙が溢れた。
戦争があろうが災害があろうが疫病が蔓延しようが、夜空を見上げると星は当たり前のように輝いている。地上でどんな悲しみや不幸、怒りがあろうが星は輝いている。
本文を読み終え、裏表紙のこの文を読んだとき拳をぐっと握りしめた。
私の周りにいる大切な人のために、私自身が星になろう
私にとっての星はなんだろうと考えた。私は決して模範的な人間ではないし、名を上げるようなこともこれまでしていない。
だから、仲間、家族、友人。私の周りにいる大切な人のために、私自身が星になろう。そして、自分という星を自分自身で輝かせよう。自分に集う大切な人を自分自身で幸せにしよう。そう決めたのだ。
星は、どんなときでも変わらずに輝いている。どんなに時代が暗くても、どんな不運な目にあっても、誰かから悪意を向けられることがあったとしても、ふてくされたり落ち込んだりせず、輝き続けて自分自身で自分を好きで居られる。
そんな自分になろう。そう決めた。
今までの私は、周りに流されるばかりだった。誰かが人を嫌えば一緒になって嫌い、何かがうまく行かなければ環境や時代のせいにする。誰かに悪意を向けられたらそれに対して過剰に反論し、自分なんかだめだと思う。
つまり、自分という人間の評価や価値を他者に委ねてしまう。そんな人間だった。もちろん、そんな自分を好きになれるはずがない。それに、環境や時代に翻弄されていたら私はいつか私自信をなくしてしまう。
どんな時代だろうと、誰にどう思われようと、自分は自分らしく生きる
この本に出会って、常に「自分という星は、今この瞬間も輝いているか?」と自分自身に問いかけるようになった。
例えば、交通機関でお年寄りや妊婦さんに席を譲るとき、今までは躊躇していた。偽善だと思われたらどうしよう。逆に失礼ではないか。そんな思いが自分の行動のストッパーになっていたのだ。
でも、今は誰かがどう思うかではなく、自分という星を輝かせるために自らの意思で行動をしている。
自分で自分を好きになれば、相手のことをもっと愛せる。生きていれば時折、悪意を向けられることもあるかもしれない。だけど、人からどう思われるかを気にしたり、人を嫌ったり妬んだりしても、自分にとってプラスになることはほぼない。
時代や周りがどんなに暗くても、自分は自分らしく生きる。そう思わせてくれる本だった。
そのように生き方を変えたら、私の周りには人が増えた。
「あなたは自分をちゃんと持っている」「人に流されないから信頼できる」「いつも明るい」と言ってくれる人が周りにはたくさんいる。
太陽みたいにいつだって明るくはできないかもしれない。だけど、星のように自分らしく輝くことは私にもできる。