思い出す旅がある。1日半の、プラハでの1人旅だ。

知らない国に行くのは初めて。束の間の一人旅に挑戦してみた

2019年の年末に、友達とそのご家族と、チェコ・オーストリアを旅した。当時イギリスに住んでいた私は、集合日より1日半早くプラハに到着し、束の間の一人旅に挑戦することにした。
大学時代に留学していたこともあり、これまでに友人と海外を旅行した経験は多い。だが、1人で知らない国に行くのは、今回が初めてだった。

空港に降り立つとすぐ、視界に飛び込んでくる見慣れない文字。一段と冷えた空気が、いま異国にいることを教えてくれる。
泊まるところまでタクシーを使えば安心だが、あえて電車とバスを乗り継いでみる。切符の買い方も探り探りで、でも、そういう小さな冒険がぜんぶ、楽しいのだ。
当時のイギリス生活の感覚で、目が合った乗客に微笑んでみたら、無視された。あたらしい文化、あたらしい空気、すべてにどきどきする。

クリスマスマーケットを歩き、チェコのクリスマスは長いと知った

小さなホステルの部屋に荷物を置いて、さっそく散策に出かける。
1人旅は自由だ。自分の行きたいところに行っても、行かなくても、何もしなくてもいい。1つの美術館に、満足するまで長居して。たまたま見つけた、地元の若者が集まるカフェに入って、ふつうの紅茶を頼んで一息ついて。

でも1日の終わりには、少しだけ気合を入れて。ガイドブックに載っているチェコ料理屋さんで、名産のロースト肉に合わせて、めずらしくビールなんか飲んでみる。
ほんとうに、チェコではビールが水より安いんだなあ(もちろん、ビールの種類によるが)。現地を訪れて、自分の中でウワサが真実になった。
ホステルまでの帰り道で、年末になっても盛況な、プラハのクリスマスマーケットを歩き、チェコのクリスマスは長いのだと知った。ホットワインとともに、見たことのない形のお菓子を一人ほおばって、思った。

私は今日1日、1人で冒険して、自分の人生を自分で楽しくしている!

全ての瞬間が学び。時間を使う、年を重ねることの肯定の方法

もちろん、日々の生活でもそれなりに楽しいことは起こるし、日本にもまだ知らないことはたくさんあるだろう。でも、自分を取り巻くすべてがまっさらにあたらしく、何もかもが新鮮で違うものになるのは、旅だけが持つ魔力だ。

そのことはつまり、すべての瞬間が、人生にとっての刺激であり、意味ある学びだ、と自分で肯定できるということだ。究極には、自分にとって時間を使うこと、年を重ねることの肯定の方法が、旅なのかもしれない。

あたらしい国でのあたらしい旅を、この2年間ずっと求めている。