初めて旅行をしたいと思ったのは中学3年のときだった。
香川県を舞台にしたあるアニメにハマっていて、聖地巡礼をしたいと思ったからだ。
SNSではフォロワーたちが聖地の写真を撮っては写真を上げ、私はそれを見ては羨ましく思っていた。

大学生になってから、バイトをして旅行すればいいんだと思った

それまでの旅行といえば、親の行きたい場所について行くだけ。しかも、車で行ける近場がほとんどで新鮮味も感じなかった。
香川旅行がしたいと何気なく言った私を、親は「大人になって自分で稼いでから行けば」と一蹴した。
高校ではバイトが禁止されていたから、大学生になってからバイトをして旅行すればいいんだと思った。

無事に大学に入学し、運転免許を取得して大学生生活に慣れたところでバイトを始めることに決めた。目的はもちろん旅行資金を貯めるため。
スケジュール帳が真っ白な春休みの予定を埋めるため、週4フルタイムで入れるバイトに応募した。無事に採用が決まり、実家に「春休みはバイトがあるから帰れない」とメッセージを入れた。

旅行のチャンス。親の言うことを無視して、バイトを始めた

しかし、親からの返答は「バイトなんかしなくていい。旅行は社会人になってからすれば」だった。
私の親は昔から過干渉で、私のやることに口を出してくることが多かった。私を自由にさせたくなくてバイトを禁止しようとしていることはわかっていた。それまでは大人しく言うことを聞いていた私だったけれど、このときばかりは違った。
中学のころからしたかった旅行ができるチャンスがきている。理由はそれだけで十分だった。私は親の言うことを無視してバイトを始めた。

大学2年の春、あるアニメにハマり、聖地巡礼をしたいと思った。行きたい場所は浅草。香川よりは近いし、夜行バスを使えば交通費も節約できる。旅行の1ヶ月前には計画を立て始めた。パソコンとにらめっこしながら、1人で交通手段の確保や宿の予約をした。

私を自由にさせたくない親のせいで、大学2年にして電車の乗り方すら知らなかったため、乗りそうな電車の時間をメモし、マップで目的地への行き方を何度もシミュレーションした。旅行の日に近づけば近づくほどその日が待ち遠しかった。

控えめに言って最高。自分のやってきたことが報われた気がした

そして迎えた当日。
旅行は控えめに言って最高だった。
画面を通して観ていた景色が目の前に広がっていることへの感動。
自分の力だけで成功させたことに対する達成感。
見たことのない景色を見るたびに、触れたことのない物に触れるたびに、自分のやってきたことが報われた気がした。
あの時、親の言うことを無視し、自分の決断を信じていてよかった。

わたしに旅が必要な理由は、自分の決断を信じて成功した日のことを忘れないため。
昔から親には「お前の考えた通りにやると何も上手くいかない。親の言うことだけ聞いていればいい」と言われてきた。そのせいで自分の意見や考えに自信が持てずにいた。
けれど、この旅を通して少しだけ自信が持てた。
これから先もそんな自分で在りたいと思っている。

今年の2月、大学生活最後の春休みには念願の香川旅行が待っている(まだ予定だけど)。
その旅行ではどんな景色が見られるか、自分がどれだけ成長できるか楽しみだ。