今の私を作った本は、『麦本三歩の好きなもの』(住野よる/幻冬舎)だ。
もともと、住野よる作品をよく読んでいた私は、出版されてすぐに本作を手に取った。

「好きなもの」は同じ。だけどもっとキラキラした日常

『麦本三歩の好きなもの』は図書館司書の仕事をしている愛すべきマイペース女子、麦本三歩が送る毎日を、公私ともにコミカルに、そしてリズミカルに描いている。
章の名前をいくつか挙げると、「麦本三歩は歩くのが好き」「麦本三歩はブルボンが好き」「麦本三歩は魔女宅が好き」などなど。三歩には、好きなものがたくさんある。

私はもちろんウォーキングをしたことがあるし、ブルボンのお菓子を食べたことがあるし、魔女の宅急便も何度も見たことがある。多くの人もそうなのではないだろうか。
どれも、誰しものそばにあって、私にも簡単に手が届くものだ。
それなのに、この作品を初めて読んだ時、三歩の日常生活は何かすごくキラキラしていて素敵なものであるかのように感じられた。
どうしてなのだろうと考えた。それはきっと、自分が好きなものがきちんと分かっていて、なおかつその好きなものに囲まれて生きる三歩自身がこの上なく幸せそうだったからだと思う。

幼い頃の私は、理由なんてなくても何故だか毎日が楽しかった。充実した日々を送っていた。
しかし、人生に少し慣れて、様々なことへの新鮮みが薄れてくる中学に入った頃くらいから、妙に物事を斜めに見るようになるのと同時に、特に大きな出来事の起こらない人生を平坦でつまらないと感じるようになり、その感覚は本作を読む時までふんわり続いていた。

三歩って幸せそうで良いな、羨ましいと思いながら読み進めていたが、ふいに「いや、私にだって好きなものたくさんあるじゃない」と思い当たった。

絶賛だらだら中。アニメもチョコパイも「私の好きなもの」

読書、ハリーポッター、チョコレート、小沢健二。ベージュやブラウンの洋服、アイドル、腕時計、パリパリに乾いた洗濯物の匂いも好きだ。
今まであまり考える機会がなかったけれど、よくよく考えてみると、私、もしかしたら三歩並みに好きなものが多いのでは?
それからは、自分が好きなものやことについて意識しながら生活するようになった。

すると不思議なことに、生活は変わっていないのに、日常の些細なことが嬉しく、幸せに感じられるようになった。なんだか、以前よりポジティブシンキングになっているような気までする。
実際のところ、自分の人生を幸せにすることが出来るか、つまらなくしてしまうのかは自分次第なのだと思う。

大学の冬休み期間である今、私は絶賛だらだらキャンペーン中だ。
11時過ぎに起きて「あちゃ~、もうお昼だ~」と思いながら朝昼ごはんを食べ、ネットフリックスでアニメや映画を見て、そうでない日は読書に勤しみ、おやつにロッテのチョコパイを食べる。それからまただらだらして、夜ごはんを食べてお風呂に入ったら一日の終わりを迎える。
ああ、なんて幸せな日々。この過ごし方は、私にとって最高の充電になるのだ。たっぷり寝ることも、アニメも読書もチョコパイも、みんな私の「好きなもの」だ。

三歩のおかげで、人生が良い方向にパラダイムシフト

コロナで好きなアーティストのライブに行けずとも、親しい友達と会えずとも、今の生活には今の生活の楽しさがあるのだ。これでいいのだ~♪全然いいのだ~♪

『麦本三歩の好きなもの』は、幸せに気が付くことができる今の私を作った。
大げさに思われてしまうかもしれないが、本作は私の人生におけるパラダイムシフトを引き起こしてくれたのだ。それもとびきり良い方向に。
おかげで、私の人生には楽しい日、面白い日、幸せな日が多くなった。

どうもありがとう、三歩!そっちも元気でやっていますか?
だらだらキャンペーン中にまた読み返して、三歩に会いに行こうかな。