『バレンタインの義理チョコ文化が、コロナ禍で縮小になっていたらしい』

私はこのニュースを聞いた時、これは色んな人に色んな感想を抱かせそうだなと思った。……え、私?「ちょっと寂しい」っていう感じ……。みなさんはどうでしょうか。

とはいえ私は、大学を卒業したその足で家庭に入った主婦なので、令和における社会人や学生の一般的な義理チョコ事情を知らないのだけれど。

世の中には「今年はやっとやめれる」と、肩の荷を下ろせてホッとしている方もいるのかもしれない。一方、毎年たくさんの手作り義理チョコを配ってきたティーン達は、一大イベントが奪われてガッカリしているのかもしれない。

確か私も、バレンタインには相当の労力を費やすタイプの乙女だった(そしてそれに付き合わされる、母と母の財布)。

義理チョコは本命の隠れ蓑。クラスメイトをランク付けして大勢に配る

私が本命以外の人に、義理チョコや友チョコを配るのが一番楽しかったのは、中学生の頃。でもそれって結局、義理チョコが「本命チョコの隠れ蓑」だったのだと思う。だってさ、本命チョコだけを用意するって……ハズいやん??(照)

私は大体、

・1番パワーを込めたやつ(ガトーショコラとか)→本命
・パワーを込めたやつの次点の出来のやつ→家族
・軽めのパワーを込めたやつ(クッキーとか)→親友
・ただ量産したやつ(市販品をリメイクしたやつとか)→友チョコ、義理チョコ
・失敗→自分

という感じで、たくさんチョコを用意して、大勢に配り分けていた。2月13日の深夜、量産したチョコをラッピングし、1つ1つにネームタグを付けていく……。まるでチョコに心を込めるかの様なこの行為。スポンサーの母も、微笑ましく見守っていたことだろう。

しかし私はその実、この時間にクラスのメンバーを、細かく細かくランク付けしていたのだと思う。「なんかこれ、納得いかない出来だけど。この相手なら、まあいっか!」ってな具合で(ヒドい)。……これが乙女のする事か??……いや、魔女だ。おじゃ魔女だ(ごまかし)。

本命チョコは、1番立派。でも私はそれだけを学校に持っていく訳ではない。学校に向かう通学路、腕に掛けた大きな紙袋の中で、2位、3位、4位、5位……ベスト8、ベスト16……たくさんのノミネート作品がガサゴソと軽い音を、そして甘い匂いを漏らす。

……だって、そうでもしないと。ガトーショコラなんて見るからにガチな品、学校に持っていける訳がない。……だってハズいやん??(大切なことなので2度言いました)

「1番好きな相手に、1番素敵なチョコを渡すもの」と思い込んでいた

しかし、「ハズいやん??」というのは、ティーンだった頃の私の呟きでしかない。今、29歳の私から見ると、当時の私には悪いけど別の推察もしてしまう。「その相手の事、本当に好きだったか?そうでもなかったやろ」と。

当時の私の感覚では、好きだったのだと思う。「1番」好きだったのだと思う。「1番」良い出来のガトーショコラを手渡した相手が。しかしそれは恐らく、周りと比較しての事でしかなかった。

私はバレンタインに、義理チョコという文化に乗っかって、色んなランクのチョコレートを用意する。そしてそれら全てを、クラスのメンバーと点繋ぎした結果。「1番」上手に出来たガトーショコラと、「1番」好きだった男の子が結び付いた。……ただ、それだけ。

「1番好きな相手には、1番素敵なチョコを渡すもの」、私にはそんな思い込みがあったから、バレンタインというイベントに参戦できていたのだ。それは恋愛脳というよりは、ただただ、幼い脳だった。

義理チョコ文化縮小に合わせ本命チョコを渡す機会も失われたら寂しい

時は流れて令和になり、私は母になった。私の息子達が通う幼稚園では例年通り、「園内での飲食物の交換はご遠慮ください」という注意書きが2月の園だよりに添えられている。ティーンを卒業してもうすぐ10年経つ私は、「あ~そうだよな」と納得する。

バレンタインというイベントを初めて知った幼稚園児は、ママにせがむに違いない。「◯◯君にチョコあげてもいい?」って。微笑ましいなぁ、「1番好きな相手には、1番素敵なチョコを渡すもの」という純粋な思い込みを抱えた幼稚園児は。……つまり、私は幼稚園児の脳のまま、中学生になっていたという訳だ。

私の幼さに巻き込まれたあの男の子には、申し訳なかったかな?……でも。それはそれでさ?ぼちぼち悪くない思い出じゃないですか。楽しかったよね。

だから私は。全国の中高生が、今年は義理チョコ文化が縮小した事に引っ張られて、本命チョコを渡す機会も失われるのかなと思うと、「ちょっと寂しい」。

……ならば、こう考えてみるのはどうだろうか。義理チョコ文化が廃れれば、比較したわけではない、ただただ唯一の「好き」を詰め込んだガトーショコラが、本当に好きな相手に手渡される機会が生まれるかもしれない、と。

恐らくハズいよね、ガトーショコラだけを持って、学校に行くのは。でもそのハードルが、ティーンの恋愛の形を変えるかもしれない。今年は市販品だったかもしれないけれど、来年こそは、きっと。魔女ではなく乙女が作ったガトーショコラが、あの人の元に。

……そう思うと。義理チョコ文化が廃れるのも、悪くないのかもね。