うっかりしていると、ぼーっとしたまま自覚なく1年が過ぎ去る

私にとって旅に出ることは、新しい空気を入れるために窓をあけるような作業だと思う。
行ったことのない国を訪れると、自分のいつものルーティーンから切り離されて、視界が開けるような気がする。
知らない国への旅はもちろんだが、本が好きな私にとっては本を開くことも同じくらいに意味がある。
本の世界に旅立つと、自分が日々の暮らしの中で無意識に凝り固めていた思考を、ほんの少し、緩めることができるのだ。

私は社会人になり、今3年目が終わろうとしている。
うっかりしていると、ぼーっとしたまま自覚なく1年が過ぎ去ってしまう。
そんなところが社会人の恐ろしさではないかと思う。

ひそかなチャレンジ精神を握りしめ、馴染みのない場所へ

仕事自体は嫌いじゃないけれど、ふと、日々が過ぎていくことに不安が頭をもたげる。
何かしたい、でも何をしたいのかわからない。
きっと私だけじゃなく、多くの人が小さな不安をかかえているんじゃないだろうか。
そんな私たちが、不安を吹き飛ばそうと、何かするための一歩が、旅に出ることではないだろうかと思う。

とりあえず、旅に出てみる。
とりあえず、本を開いてみる。
そうすれば、辿り着いた先でいつもより、少しだけ新鮮な空気が吸えるかもしれない。

その先に何が待っているかはわからない。
だけど、自分の中にあるひそかなチャレンジ精神を握りしめて、馴染みのない場所へ一人で足を踏み入れてみる。
そんな時間を手にしたくなる時がある。

自分の可能性を、客観的に見つめられる機会が与えられたようで

なんだか怖がりながらも、その一歩を踏み出すことで、心細さの中でもワクワクできる自分に出会えるような気がする。
そして、そんな自分の可能性を、客観的に見つめることのできる機会が与えられたような気がする。
凝り固まってしまった自意識がほぐされるその瞬間が面白いのだ。

今は、以前とは違って気軽にふらっと海外に行くことができない時勢。
だからこの際、飛び込むのは何でも良いと思う。

行ったことのない街にいく。
歩いたことのない道を歩く。
作ったことのないものを作ってみる。
知らないものを知ってみる。

誰かに言うほど大げさなものではないけれど、一人ひとりにとってはちょっとした、だけど大事な出会いの旅になるかもしれない。

旅先での"何か"との出会いを考えただけで、ワクワクしてしまう

本が好きだからこそ、私が最近好んで飛び込むのは、様々な作家さんが書き記す旅のエッセイだ。
自分ではない誰かが、その地で様々な人や町と出会い、考えたことを綴っている。
そんな彼らの旅エッセイを手元で開いて、その旅に一緒に飛び込ませて貰うたび、私にもまだいろんな人やものと出会える可能性があるんじゃないかという、そんな予感に期待で胸が膨らむ。

実際の旅なんて、いざ行ってみると困ったことにも多々遭遇するかもしれない。
けれど、そんな風に旅先での"何か"との出会いを考えただけで、ワクワクしてしまう。
だから私は旅することへの期待をやめられない。

時勢が落ち着いたときにどこかの国を訪れる旅を心待ちにしながら、今は色んな作家さんの旅の記録を渡り歩いて、自分の中に流れる空気を入れ替える。
そうしてふと、日常の中で疲れてうつむきかけてしまう顔を前に向けて、一歩ずつ歩いていきたい。