頭の中を真っ白にしたい、日常がなんだか物足りない、刺激が欲しい、未来に迷っている、そういう感情に時々襲われてしまう。
謎のもやもやが私に襲いかかると、あぁ旅に出たい!!私に訪れる感情は、物欲ではなく間違いなく旅欲だ。

私は、旅先で見つかる未知なる「何か」を求めて、気づくと、旅先の航空券を手にしている。
航空券を手に入れた途端、直観アンテナが急に動き出すのだ。

一人旅は、本来歩むはずだった平凡な未来を180度変えることもある

未知なる世界を求めて、歩きだし、旅を終えると、「素敵な友達と出会えた」「未来への答えがみつかった」「決断ができた」「最高にわくわくする」「明日も楽しみだ」いろんな感情が私の身体じゅうを満たしてくれて、達成感と満足感でおなかがいっぱい。

期待に胸を膨らませて、搭乗する行きの飛行機。そして帰りの飛行機では、青空や夕空をみながら「あぁ、世界はこんなに広いのに私の悩みはなんてちっぽけだったんだ」そんな風に思えたり、旅先とのお別れが寂しくて感極まって涙が自然とあふれ出すことだってある。

一人旅が、自分が歩くはずだった平凡な未来を180度変えてしまうこともある。2021年の10月の屋久島は旅は、まさに私の運命そのものを変えた。
日本が誇る世界自然遺産、「神の島」と言われる屋久島。飛行機トラブルで飛ばなかったり、台風で船が出なかったりと、「呼ばれていない人」は何度チャレンジしてもたどり着くことができないと、聞いたことがある。

ウィルソン株をスマホの待ち受け画面にすると、恋愛運がアップすると噂を聞き、ロック画面に設定したことが懐かしい。神秘的な噂や言い伝えに、いつかは、私も屋久島に行ってみたいとうっすら考えていたが、なかなか行動に移せずにいた。

彼に振られた報告をすると、親友が送ってくれたのは1枚の写真で

2021年10月といえば、仕事はうまくいかず、そんなときに「彼氏ができました!」と親友たちに報告した矢先に彼に振られ、大恥かいたりと、大失恋というダブルパンチで毎日泣いていた。

恥ずかしながらも「振られちゃったよ」(もう何回目の彼氏だ?)と親友にラインを送ると親友から1日後に写真付きの返信が来た。
「あんたを振る理由がわからない!なんで!実は、屋久島に行ってきました!コロナ禍だから言うか迷ったけど、この写真をどうしても早く送りたかった!たくさんパワーをもらったから、きっといいことあるよ!パワーのおすそ分けです」

そんな優しい彼女のメッセージと一緒に、ハート型のウィルソン株の写真が送られてきた。28歳になっても本気で自分のことを心配してくれる友達がいてくれることに、なぜだか嬉しくて泣けてきたことを鮮明に覚えている。
これだ!と私はすぐにスマホのロック画面をもらった写真に変えた。そして、直観的に「屋久島に呼ばれている!!」そう感じたのだ。
行かなくちゃ!!何かが変わりそう!!
そう感じて2日後には屋久島行きを決めていた。

フランス旅行以来の一人旅。
とてもわくわくした。

険しい道を歩いて辿り着いた縄文杉を見た瞬間にあふれ出た涙

1日目は、ノープランで空港前のレンタカーを借りて大自然を一周した。野生の猿や鹿たちが、ひとりの私を出迎えてくれた。

2日目は、縄文杉ツアーに参加した。朝の4時にホテルをでて、11時間山道を歩き続ける。3時間ほど歩いた先に、友達のくれた写真と同じ光景が広がっていた。
ウィルソン株の中。ハート形の天窓から差し込む神秘的な光には、「未来は希望にあふれているよ」と伝えてくれているようなパワーを感じた。親友の写真がここまで私を導いてくれた。一人旅だけど、一人旅ではないなぁと暖かい何かを感じた。
きっかけはたった一枚の写真でも、支えてくれる友達や家族が、私をいろんな場所へ導いてくれていることを心から感じた瞬間だった。

そして、5時間程度歩くと、神々や精霊が宿るといわれている一番のパワースポット縄文杉に会うことができた。
私はそこで奇妙な体験をした。強い雨や風が私たちの歩みを遮りながらも、たどり着いた縄文杉。とても険しい道のりだったけれど、縄文杉を一目見た瞬間、涙が止まらなかった。
「あなたは今までよく頑張ってきた」「もう頑張らなくていいんだよ」「すこしゆっくりやすんで」「もう自分のために次に進もう」そんな声が聞こえてきた。

私は涙が止まらなくて、「呼吸できてる!!」「屋久島って気持ちいい……」って心から感じた。そして同時に、自分が住んでいる環境の中で、エゴにつぶされそうになり、呼吸できていなかった自分に気づいた。
縄文杉に出会えて、私は決断できた。
今の福祉の仕事が、自分の中の学歴のようなステータスになっていて、自分の価値そのものだと勘違いしていた私は、長年仕事にしがみついていた。だけど、縄文杉に出会って、転職を決意することができた。

縄文杉トレッキングツアーの帰り、夕暮れ時がとても美しくて、涙が止まらなかった。そして私は、屋久島に恋をしていた。

屋久島は人生を変える。そう期待した旅は大袈裟じゃなかった

旅を終えると、翌日に退職届を提出することができた。
退職を決めてから(自分にとって大切なものを捨てる決意をしてから)、本当に幸運なことが続いた。何かを捨てることで、新しいことがどんどんはいってくるって話を聞いたことがあるけど、本当みたいだ。

大切だった仕事を捨てたが、その途端、びっくりするぐらいの運命的な出会いがあり新しい恋人もできた。
そして転職先もすぐに決まった。
宝くじまで当選した。

うつ病になりかけていた私を、屋久島が救ってくれた。
旅は、私にとって「未来の地図」そのものなのかもしれない。
「屋久島は人生を変える!」そんな言葉に期待して、旅に出たけど、大げさではなくまさにその通りだった。

1年後もう一度屋久島に行ったら、次はどんな自分と出会えるのだろう?
同じ景色でも、心の成長とともにきっと見える世界が変わっていると思う。
あぁ屋久島が恋しいよ。

直観で決めると得るものが本当に大きい。
そして迷路にはまったら、また旅に出よう。

一人旅の出発、出会ったことない世界そして、出会ったことのない私に出会えることに期待してとってもワクワクする。
一人旅の帰り、友達や、家族が恋しくなる。ひとりもいいけど、やっぱりいつもみんなに支えられて、今の私がいるんだよなぁって旅の終わりには、いつもそんな感情に包まれる。その感情と同じくらいに、旅地との別れが悲しくなって、旅先に恋している自分に気づくんだ。
その切なさがたまらなく愛おしい。「私生きてるなぁ」って心から思えるんだ。

そして、また、なにかに呼ばれて直観と感情のまま私はどこかに旅をする。